城平京『幸福の終わり、終わりの幸福』


小説 スパイラル~推理の絆~ (4)

!!!ネタバレあり!!!

再読。


いいねいいね。ちゃんと証拠探しのターンが設けてある。ミステリってる!
推理によってある程度納得のできる、確率が高そうでそれなりに説得のありそうな筋を思いついただけで「貴方が犯人です。こうこうこういうトリックなら犯行が可能です」⇒「くっ、参りました」なミステリなんて、「証拠もないのに認めてんじゃねーよ」だからな。


犯人が指紋を拭ったのは誰の指紋?⇒
用心深い犯人は手袋をしてた筈。被害者のものと考えた方が自然だ。⇒
ならば、被害者は手袋をつけずに折り紙を折っていた可能性がある。⇒
折り紙が見つかり、推測通りそこに指紋が残っていれば証拠になる。⇒
探そうぜ!⇒
ハケーン!(`・ω・´)ゞ


と、推理によって証拠に辿り着くくだりはなかなか素敵。駄作だと、実際にはあるかどうかもわからない証拠は探さず、偽の証拠品をでっち上げ自白に導くとこ。
一応本作も、『証拠が足りないため嘘の情報で自白させる』という解決ではあるのだが、少なくとも警察を動かせるだけの証拠は見つけているからそれなりに納得できる。


でも本作、犯人が自白したという解決を説得力のあるものにするために色々理屈つけて頑張ってるが、もし犯人が自白しなかったらそこで終わってたし、シビアに見ればやはりもう一つの証拠品が必要だったんだよな。
『被害者が手袋をせず折り紙を折っていたことを犯人だけが知らなかった』という証拠。
この証拠が無い限り、
佐古忠が犯人で、彼は間抜けにも再生紙を使って折り紙を折り、被害者が手袋をしていないことを知らなかったのかもしれないし、
杉宏美が犯人で、彼女も再生紙を使っていたかもしれない。そして、10個未満の『折り紙の悪魔』が偶々当たったのかもしれない。
だからこの証拠を作り出すことができてればよりよい作品になっていたかもと思う。そこが唯一惜しい。
……と思ったが、その証拠があったとしても、『残り二人の容疑者が犯人で、わざと指紋を残さなかった』可能性は消せないし、絶対の証拠で犯人を指摘するのは無理か。
フーダニットは描くの難しいてことだ。


何だかんだ言ったけど、十分に納得できるレベルだった。城平先生また小説書いて下さいよ。マジで。