2012年10〜12月期アニメ感想 2

 なんか長文化してきてるな。


お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ Vol.2 [Blu-ray]
 今期の何も考えず楽しめるハーレム枠。
 なんかよくわからんけどみんなで寮生活することになって(必然性は皆無)、でも主人公くんは興味なかったりその気がなかったりの鉄壁ガード。最終回まで女子が気を引こうと頑張り続ける。
 最終話で「実は〜」という申し訳程度のオチがつくんだけど、これやっぱ微妙だな。第一にテーマを台無しにしている。「倫理的問題と愛の対立」がテーマなのに、これじゃ普通のハーレムアニメじゃん! 第二に、「実妹じゃなきゃ萌えないだろうが!」と言う人の期待に添えてない(俺じゃない)。おまけで第三。公式サイトにハッキリ「双子の妹」とあるのは小説でいう「地の文の嘘」にあたりませんか? アンフェア! アンフェア!


 もちろん「妹」をモチーフにしたごくごく平凡なハーレムものをやりたかっただけとは思うけど、だけど超展開でもいいし、倫理的に納得させてくれなくてもいいから突きぬけてほしかった。もともとエンタメに徹したハーレムアニメなんて常識的な倫理観は期待されておらず、むしろ常軌を逸した欲望丸だし展開こそが求められているのだからギャグ調にしつつ「実の兄妹だけどくっついちゃうよー?」で良さそうなもんだ。あの妹の性格からするとくっつかない方が正道にも思えるからそれでもいいけど、とにかく実の兄妹としてくっつくか否かの二択だ。実妹じゃないってなんだ。それじゃどうなろうと意味も意義もないだろう。普通のハーレムアニメじゃん!(二回目)


 主人公秋人くんは常に堂々とした態度で冷静さを失わないタイプ。ただ、なんか腹の中さらけ出してない感があってそれほど好感度は高くない(不快でもないけど)。あと、一見デリカシーのあるキャラのようでありながら、「お尻に挿れるネギ」というセリフをもう一度言わせようとしたり、会長の足の震えを指摘したり、女の子側が触れられたくない部分を黙ってスルーしないキャラになってしまっているのは面白い。ツッコミを兼ねてるせいでこうなったのだろう。
 にしても秋人が自分達をモデルにしているとしか思えない恋愛小説を書いていたのは結局なんだったのか。あの小説さえ書いてなきゃ疑いようもなく真人間なんだけど、編集の神野さんを主人公に絡ませるためだけの理屈付けでもないだろう。素直に見ると作中言及されてたように秋人が秋子を好きなんだろうけど、素振りとしてはまったくそれを感じさせないんだよな(いちおうブレーキはかけてるらしいが)。受け手の興味(本当は好きなの?)を引くためのフックの一つだったりするのだろうか。それにしても小説家設定はあまり必然性が感じられない。


 肝心の女の子キャラは、見てて普通に楽しめはするけどそんなに……かな。「好き」な気持ちに説得力が乗っていないし、恋する女の子の可愛さを描くことよりはコメディに重点が置かれた作りだから当然だろう。ただ、銀兵衛が猫相手に一人で喋ったりそれを目撃されて顔赤らめたり、会長がお化け恐がったりといったキャラクター達の普段見せない顔が垣間見えるあたりはさすがに可愛さが出ていたと思う。基本的な見せ方だけど、やっぱそういう変化(キャラの崩れ)にニヤリとしてしまう。
 逆に会長のおしとやかバージョンなんかはまったくだったよな。あれが普段誰にも見せない本性だったとしても、受け手がハッキリそうだと実感できなければ可愛いとは思えないものなのかもしれない。


  • しばらく秋子を年下(一年生)として見てたんだけど双子だったのか、精神年齢かけ離れて見えるし、敬語使うし、すごい違和感あるな。
  • 誰も言わないから言っとく。「血が繋がってさえなければくっついていいみたいな感じになってるのもどうかと思うけどな!」
  • 一話冒頭は本当に秋子が正統派美少女キャラに見えて、掴みがかなり上手くいっていた。
  • 噂の声優、木戸衣吹。声の出し方とか抑揚とかちゃんと出来ててすごい。あの手の女の子キャラのキンキン煩い感じよく出てたし。でもやっぱ滑舌、特に「ら行」は気になる。未成年だとまだ成長途中だから文字通りに舌が足りてないとかあるんだろうか。
  • キタエリ(会長)のこの演技、すげー歌舞伎っぽい。発声第一音目のアクセントが強い感じ。
  • 会長。最初見たとき、絶対にこのキャラは「遊びは終わりにしようか!」とか言い出して中段から300〜400持っていくと思った。
  • 海に行くために全員で水着を選ぶくだりとか印象に残ってる。本当に兄バカなところ以外は女子力も高くまともなんだなと思わせられる秋子の描写もさることながら悩んでる銀兵衛に対し親身になってあげてるとことか素敵じゃん。男視点だとパッドに対するコメントって「偽乳ふざけんな」なんだけど、こんなふうに小さすぎるのが恥ずかしいから、男の気を引く以外の理由でパッド入れるケースもあるわけだし、そうした女視点からするとそういうふうにしか言えない男はさぞかし最低なことだろう。


てーきゅう [Blu-ray]
 「通常ドラマに必要な"間"をあえて捨てる作りになっていてゆっくり笑う間もないんだけどスベる間もないから勢いでなんか面白く感じるのでは?」とか、「一度ではよくわからないから二度三度見直し、そのために『あれ? 二回も見てるんだからこれ面白いんじゃね?』と錯覚しているのでは?」なんて風に思ってしまう曲者アニメ。どうも本来は面白くない作品がハイテンポで誤魔化されているように感じられてしまうんだよな。ズルく見えてしまう。


 だけどそうした特殊性を無視して、「ネタ自体は面白くないからダメ」とするのは違うよな。そこは面白く見せるための工夫なんだし、それだと「たられば評価」になっちゃうから。もちろん「ネタ自体はつまらない」という指摘はあっていいと思うけど。
 つまり、構えずふつうに評価すればいい。


 というわけで、一つ一つのネタはつまらないものもあったけど(特に序盤)、普通に面白いところもあったし、ハイスピードで誤魔化される分スベられてもそんな辛くないし……で、結局はかなり楽しめた、良いアニメだったって感想になる。
 でもやっぱ最初は面食らうというか、尖り過ぎててどう評価したらいいかって考えちゃうよなー。テンション高くて全体的には楽しいんだけど個々のネタにつまらない箇所があるのがよくない。面白いって言っていいか悩んじゃう。
 そのうえネタがまったく意味不明かつ予期しない方向に飛ぶ不条理さも掴みどころのなさに拍車をかけてくれる(いきなり土の中に沈みだしたり)。


 でもやっぱ二期あったら良いなと思いました。


  • このやり口、なんか既視感ある。なーんか既視感あると思ったらあれだ。『ギャグマンガ日和』と同じなんだ。でも早送りはせず早口で頑張ってるっぽい。そのために妙な勢いとドライブ感が出てる気がする。
  • この早口も含めてのキャラになっている気がするので漫画読んだら違和感ありそうだなー。あとこのやり方だとおっとり系のキャラ出すの難しそう。
  • 執拗に繰り返される宣伝のせいで一人だけは名前覚えた。「高宮なすのです!


「K」Image Blu-ray WHITE&BLACK(Blu-ray Disc)
 紛れもないB級作品だろうけど、主観的には好きだったし、面白かった。
 世界観やキャラや能力、謎といった要素要素が魅力的だったり、色んなことを想起させてくれたりして面白かったんだよな。それらを十分に活かせてはなかったけど、「残念」や「惜しい」とは思えど「どうしてこうなる!?」という苛立ちはなかった。やっぱ色々と詰め込み過ぎてたのが良くなかった一番の原因かな。制作側の見せたいものが多すぎる。


 もう一つの特徴として、「何が起きてるのか?」「何をやってるのか?」「焦点がなんなのか?」「それぞれの目的は?」、など、疑問符が多く浮かぶストーリー全体のわかりにくさが挙げられそうだ。
 ただ、よく「意味がわからないからダメ」という人がいるけど、作品において「わかりやすさ」と「良し悪し」はイコールではないはずだ。もちろん「わからない」という批判はありだけど、それ自体が絶対的にマイナスで、かつ客観的評価として通用するかのような言い方はどうか。「わからない」は絶対悪じゃない。
 ……で、本作の場合、あえて説明を放棄する見せ方が選択されていたようだけど、説明が嫌なら嫌でもうちょっとやり方はあったんじゃないかとは思う。
 説明しようとしてるところもいただけなくて、天然能力者ストレインとか、言ってるだけで理解させる気がないからね。ただ口にしただけで説明した気になってるなら考え直してほしい。ややこしいところは図を出すなりしてほしかったけど、このアニメ醤油瓶並べて喩えたりしてそういうのすら拒んでたよね。実映像のみの説明に固執してたけどそれだけで捌くには情報量が多いし……、あと情報の重要度に優劣つけれてなかったのが悪かったのかなー。
 そういった点を解消する意味でも話のポイントを絞れれば良かったんだけど、設定の器の大きさと、謎を抱えながら進めるストーリー展開がそれを邪魔してた感じかな*1。だいたい、赤・青・無色・白銀くらいで完結しそうな王の数を「7人いる!」とか言い出すのがよくない。


 逆に評価したいのはミステリ的な見せ方。かなり意識して作られたと思うんだけど、このへんの面白さはよく演出できてたんじゃないか。というかこの作品半分くらいはミステリと言っていい。
 社が学園のみんなに認識されていないことを示す前半の伏線と開示の仕方。記憶の復活から判明するそもそもの始まりとか、犯人が二転くらいするあたりとか(社>飛行船の主(白銀の王)>現:無色の王(キツネ煙))。
 前半の社のくだりはとくに作り手のミステリ好きを感じさせるなぁ。思い出すのはDSゲーム版『THE 鑑識官*2(ネタバレ御免)』。絶対に知っているはずの人物に写真を見せ、「え? この人誰ですか?」と言われた時のぞくりとする感覚ね(ホラーでもある)。あれはいい。それに他者を操れる能力者で視聴者を騙したり驚かせたりというのは『サガフロ2』を連想させるやり口。でもここはもっと上手いやり方があった気がして惜しい。
 キツネ煙がラスボス(犯人)ならノックスの十戒にならい序盤からキツネを出しておくか、あるいは能力不明の次世代無色の王の存在を強く匂わせておくべきなんだけど、本作は後者が選択されていて、「社=無色の王」とミスリード。「皆の記憶を操る能力を持った王なのか?」って具合に話を進めたんだよな。でもそれすらネコの能力だと判ると逆に「じゃあ無色の王の能力は?」となり、謎の解決が新たな謎を生むような作りになっている。これ、ありがちだけどもなかなかテクいし面白い。ってもやっぱわかりにくい見せ方だったから考えないと話理解するのに手一杯でついてけないんだけど。


 結局、世界設定にしろキャラにしろ展開にしろ全体的に「わかる面白さ」なんだよな。見せてない部分までこだわって考えられていて、初見や序盤でわからなかった部分がわかってくるとたしかに快感はある。言葉での説明を拒みがちだったのもその面白さを演出したかったんだろう。
 反面、キャラまでもが理屈で作られているようで(赤しか認識できないから周防が好きとか)、ドラマとしてはいま一つ盛り上がりに欠けたな。群像劇故に個々の感情描写が希薄になっていたし、ドラマ面のテーマがなかった。
 だけども、決して駄作ではない。世間で思われているほど悪くない作品だったと思う。これは言っておきたかった。


  • ネコはもっと中心で引っかき回すようなキャラであって欲しかったなー。キャラ立ちに比べ活躍が十分でなかったのが惜しい。
  • この世界には特殊能力を持った野良猫や犬がいて、そいつらは人語を解しなんか人間の姿になれたりする……ようだが、さすがにもうちょい説明欲しかったかな。
  • 社(シロ)と狗朗(クロ)が凸凹コンビっぽくなってるけど狗朗が実は犬だったり、猫も犬もクランズマンになったりということを考えると、立場的にはネコとクロの方が同列っぽく見えてどうも綺麗じゃない。
  • 伏見猿比古くんの鬱屈した感じは良い味だしてて悪くない。たぶん自分の矮小さや未熟さに嫌気がさしていて、だけど赤青どちらに属してもそれが解消されなかったのではないか。最終話の「器の大きい人間は嫌い」というのは、立派すぎる彼らがつまらない自分の理解者たりえないからであり、八田美咲に絡むのは理解者足りうる元友人が一人だけ鬱屈を解消したのが羨ましくて自分の破滅願望的な衝動をぶつけることで甘えているのだろう。逆に淡島世理なんかは惹かれつつ自身も追いつこうとしているキャラのようだが、どちらにせよ孤独な王と理解しあえるのは王だけ……ということらしい。
  • BL&中二要素は、苦手な人も我慢できる範囲ではないですかね。一話が一番きつかったけど後は平気だった。
  • 関係ないけどニコニコ動画の右上ネタってあるじゃないですか? 偶然見た時に「右上、抜刀!」とか言っててちょっと笑ってしまった。
  • 検索性の悪さという点において本作以上のタイトルがあるだろうか。アルファベット一文字だよ、出てこねぇよ。でもGoogleでもAmazonでもなぜか出る不思議。
  • 学園生徒は菊理含めてそれほどキャラ立ってるとは思えなかったな。Wikipedia読むとそんなことなさそうに見えるけど。それに菊理は活躍に比してキャラの納得度が足りない気がした。あの展開にするならもっと幼馴染みたいな関係性にしとくべきというか。たしかに弁当作ってくれたりはしてたんだけど……うーん。社がみんなと仲良かったせいか、ちょっと仲の良い一友人みたいな印象なんだよな。あ、会長は良かった。
  • ところで本作最大の疑問点だが、おそらく死者の体は操ることができないだろうキツネ煙が最初に操っていた現・社の体を持つ少年の人格は一体どこへ行ってしまったんだ? 本来であればキツネ煙が白銀の王、アドルフ・K・ヴァイスマンを乗っ取った際に意識が戻っているのだろうが、そこにはヴァイスマンが入り社となってしまったわけで……。んん?

*1:器が大きいからこそ続編作れるってのも得心がいくけど

*2:1か2かは忘れた