『大神』感想 〜作り込みがハンパなさすぎる神ゲー〜

大神 絶景版 PlayStation 3 the Best ((大神サウンドトラックCD「幸玉選曲集」) 同梱)


 コンシューマーゲームの感想なんて久しぶり。ていうかはじめてレベル?
 「いつか消化しなければならないリスト」に長いこと入ってたゲームだけど、絶景DL版のセール時に買ったものを今ようやくクリアできた。発売から10年経ってないというのは自分にしては上出来かもしれない。
 昔はそればっかやってた「RPG」というものをやるのが今は心底苦痛になっていて、本作も一日30分ずつやってたんだけど、それでも7時間くらいやった辺りで140日くらい放置してしまっていた。でもやっぱりクリアはしとこうともう一度手を伸ばしたらそっからは早かったね。
 プレイ時間はサブイベントまでこなして65時間。5時間くらいやってもストーリーまったく進んでないなんてこともあって、こんなの一日30分じゃ無理だったな。サブイベ無視すればかなり短縮できただろうけど、サブイベの面白さってのもあるわけで、サブイベも戦闘もほぼこなさずクリアして、『大神』やったと言えるかって言うと、言えないよなぁと思う。


 本作に関しては、ストーリー、キャラ、グラフィック、音楽、戦闘、演出や作りこみなどなど、どこを切り取っても出来が良いのでどう話して良いものか迷う。本当、全方位的に高レベルでまとまっていて、心底「カプコンってすげぇなぁ」て思わされた。印象論になるけど、「誰それさんという天才がいるから」っていう個人的な力ではなく、「会社の力」である気がする。


 昔『ドラクエ4コマ』で『魔方陣グルグル』の衛藤ヒロユキ先生が『ドラクエ』を指して「ボタンをテンポよく押すのが気持ち良いゲームは良いゲーム」と言っていて、当時「RPGはストーリーだろ」と演出や設計のことなどまるで分かっていなかった俺はその意味がさっぱりだったんだけど、本作やってると本当にそうだなーと思う。


 やることが完全にハッキリしていて、悩まず迷わずサクサク処理できるときに感じる快感というのが人にはあって、本作もそれを感じさせるつくりが上手いなぁと。
 たとえば、「クローバー発見」>「掘り出す」>「桜花」>「出てきた動物に餌」みたいな流れ。戦闘も、「姑獲鳥」>「疾風などで地面に落とす」>「無礼などで攻撃」>「傘開いたら疾風」>「霧隠して攻撃」>「倒したら霧隠で妖怪牙奪取」みたいに、すべて理解した上で処理できるようになると楽しい。
 このゲームは宝箱が異常に多くて、一つ見つけたらその先にもう一つ、それを開けたらさらにもう一つ……と、どこかに誘導でもされてるかのように配置されてることがあるんだけど、これを追っちゃうのと同じ感覚で気づいたらあれやってこれやって……ってなってる。「釣れば釣るほど大物が捕れます」っていうミニゲーム「釣りイベント」もそうだけど、この「撒き餌による引き込み」は間違いなく本作に通底している設計思想の一つ。上手いのは、作業が小分けになってるわりにギリギリ作業感がない出来になってるってとこ。宝箱なんて「開けたら取れる」ではなく、「開ける」>「取る」と2アクション要求されるのに、それが苦痛にならない。
 やっぱり、ストーリーだとか謎解きだとかゲーム性だとか、「骨」の部分だけ見るとそれほど新しさや画期的なところがあるわけではないと思うんだけど、肉付けの部分が本当に凄くて、それで成功してるよなぁ。


 ストーリー的には「生き方を決める覚悟」みたいなものがテーマになってるように思う。
 アマテラスやウシワカ側のストーリーというのは、過去に何があったかという作品を牽引する謎はあるのだけど、テーマ的に見ると何も訴えてはいないため、その点で言うとイッスンの物語という側面が強い。スサノオもイッスンみたいに周囲の目という重圧とかあったわけだし、クシナダは逆に覚悟できてる側の人間で、「私にはお酒しかないの!」って言いきってたり……。あとは飛脚のハヤテ兄弟とか、陶芸家の名もなき男だとか宝探し男だとか竹取のじいちゃんだとか……ウシワカが言ってた、「旅の中で見てきたはずだよ」というのはそういう人たちのことだよね。そして、コロポックルミヤビの「誰かに褒められるために絵を描くなんて間違ってる!」という辺りのセリフ。やっぱりゲーム作ってるのってそういう迷いや葛藤の末に決断した人たちだろうから、こういうのがテーマになると素晴らしいなと思います。


 ↓↓↓ その他の感想 ↓↓↓

芸が細かすぎ

 人や動物が、体当たりしたり、くわえたり、ジャンプしたり、吠えたり……というアクションの一つ一つに対してリアクションしてくれる。
 そして地蔵を一閃すると首が刎ね(そして元に戻る)、オキクルミに一閃すると「無駄」と表示され、障子を一閃すると部屋の奥が見え、掛け軸などを一閃すると裏に隠してあるものが見え……(イッスンの部屋とか笑った)。何この作りこみは。どれだけの金と時間があればここまでこだわれるんだという作りこみっぷり。これは色々やりたくなるし、試すのが楽しくなる。
 「あの島は絶対なんかありそう」と思って行くと本当に何かしら見つかるとか、「なにか発見しようとしたとき、その期待に応えるように用意されてる」ってのは良いゲームだなぁと思います。
 洋ゲーなんかだともっと凄いんだろうけど、こういうの「自由度高いなぁ」と感じるね。
 あとウエペケレの人たちに桜花すると狼の姿に変わるけど、ストーリー上その姿が必要だったオキクルミ・カイポク以外のキャラも狼状態のモデルが用意されてるとか凄すぎるでしょ。ゲームにはまったく関係ないのに!

不満点

  • イッスンに盗ませたときいちいちメッセージが出て戦闘が止まるのはテンポ悪い。
  • 答選坊は4*4の位置でしか光らないのに、マス目的なものがなく、位置が少しでもズレるとアウトってのはきつい。星座のような補助線or筆が吸い付く親切設計が欲しい。
  • 「釣り」は魚影で判断できるようにしてくれないと、辛すぎる。これは本当に作業になる。
    • 魚影+スピードで判断するしかない。
  • ツヅラオ弔いイベントってないのかよぉ。ずっと洞窟の中に白骨死体が放置されてんだけど、これはちょっとどうにかしてほしいよね。どうにかできるんですか?
  • カイポクレースが勝利後にもできるのと同様に、百鬼夜行も好きな時に何度でもやりたい。ボス戦も。

その他

  • キャラがゴニョゴニョ言ってるのは古代日本的な、現代とは言葉が違うんですよ感を出すためだと思うけど、これかなり良いのではないか。
    • というのも、最近よくあるフルボイスって嬉しい反面うざったいんだよね。テンポよく進めたいのに、喋られてるとつい耳を傾けてしまうし、読んでるところと聞いてるところに生まれるズレが気持ち悪いし、その音声を飛ばすのに抵抗もでてしまう。でもこれなら抵抗なく飛ばせるし、かといって「喋ってる」満足感は味わえる。
      • そういやドラクエの「プルルル……」っていう電子音。男女で音の高さ変えられてたりして……あれもこうした効果を狙って作られてた演出だったのだなぁ。
    • それでいて「よしっ」とか「キャッ」とか、要所ではそのまま喋るのがポイントだよね。
  • アマテラス可愛い。ドラクエに代表されるしゃべらない型の主人公なんだけど、しゃべらないことに必然性があったり(喋れない。他の筆神達は喋れるのに……)、何考えてるかわからなかったり、無言系主人公としては極北とも言えるのではないか。結局コイツはどこまで理解してるのかよくわからないんだよなぁ。いや、人間の言ってることは理解してるとは思うんだけど、ヤマタノオロチと戦う前に、目に見えない結界の中に閉じ込められた時、イッスンが「閉じ込められちまった!」とか言ってる間も目に見えない壁があることを不思議がってずうっと壁を手で叩いてたり、システム上の問題なのかもしれないけど、相手がシリアスに真面目な話してる時も、どっか別の方向見てたりしてたりして、普通の動物っぽいところもあるから、可愛いんだけど、よく分からん奴だなと。
    • 筆神が出た時の演出とかけっこう面白いんだけど、猫神登場時にイッスンでサッカー始めたときはホント笑ってしまった。
  • 人魚泉とか鏡移動とかはあるけどルーラほど便利ではない。んだけど、走ってるのが本当に気持ちいいゲームなんだよなこれ。移動がそんなに苦にならない。
  • ボス戦中に幽霊が出てくる演出熱い(やっぱりまったく意味はない)。
  • 『アルカプ』みたいに戦闘中スムーズに器替えできたらなぁとか思ってしまうね。
    • 『アルカプ』。一閃ガードされたらちゃんと「無駄」って出るのすごく良いよ。