過去記事補足

×-ペケ-

 クールとか美男美女が〜とか言ってるけど、女性作家のわりにブス・ブ男、変顔、暴力描写などが多いピーキーっぷりも兼ね備えていた、ということは追記しておくべきだろう。

だがしかし

 「作中料理入手難度:D(非常に易しい)」とか言ってたけど、ぜんぜんそんなことなかった。たしかにコンビニにもスーパーにも駄菓子コーナーはあるんだけど、品揃えはまちまちだし、ないものはどこに行ってもない。やっぱ専門店がないとダメだなー。あのワクワク感も味わえない。
あと、この作品の良さはやっぱヒロインの枝垂ほたるのキャラ&エロが持ってる節あるなー。

異世界食堂

 「飽きられやすそうな構造が苦しい」みたいなこと言ってたけど、この作品にはもっと致命的に苦しいところがあって、それは「メニューの数にも限度がある」ところだ。「こんなの洋食屋のメニューじゃないよ」ってツッコミより苦しい気がする。単純に、客が注文して食べるパターンだけだといつまでも続けられるものではない。
 常連客だって増え続ける一方だろうし、そしたら「どんだけ客いるんだよ」とか「とても一人で捌ききれる量じゃないだろう」とかのツッコミも出てくるし、構造からして長く続けられるものではないはずだ。過去話やったり通常メニューじゃない品を出したりして手を変え品を変え現時点でもよく続けられているくらいではないかと思う。
 もう一点、野暮を承知でつっこませてもらうとするなら、「週六日労働はきつくね?」てことだろうか。しかも土曜はすげー忙しいんだろうし。ホント無理だから……死ぬから……。店主は異世界の住人からエリクサー買ったらいいと思う。


 最近は最新の話を追いつつ一から読み返してるんだけど、書籍化が決まったようでめでたい。アレッタとか女王様とかの絵が気になります。

料理作画

 「写真みた〜い!」とか言ってたけど、実際写真加工してるような気がする。『K』とかとくにそんな感じ。

俺の浅い4コマ史に残るクール少女漫画 〜新井理恵 『× -ペケ-』〜

×(ペケ)(7) (フラワーコミックス)

 全7巻で、単行本の発売時期が92〜99年。
 俺が中学二年生の頃、何かのきっかけでクラスの男子の間で爆発的ブームになった少女(4コマ)漫画。本当に何がきっかけだったか思い出せないんだけど、たしか一巻を誰かが持ってて、みんなで回し読みして流行ったんだったと思う。二巻以降はハマッたやつが高い金払って買いだして(800円)……と、そんなんだったと思うが、仮にも少女漫画であるこの作品を最初に持ってたやつはなんだったんだろうな。いや、「男のくせに少女漫画を〜」なんて話じゃなく。


 作品の舞台は高校で、ターゲットもその年代だったのだろうと思うのだが、少女マンガすらまともに読んだことのない時分に読んだせいかやたら衝撃的だった。まぁ中学生くらいのときって青年誌とか読み出したりする年代だし、転換期というか、子ども向けでないものに手を伸ばす時期で、そうした衝撃を受けやすい年頃だとは思うのだけど、自分にとっての本作もその例に漏れず、4コマとしてはたぶん『あずまんが大王』くらいの衝撃はあったんじゃなかろうか。


 4コマって、最後のオチで大げさにリアクションとったり派手にツッコんだりするアッパー系と、ツッコミを避けたりボケをクールに流したりするダウナー系とに分類できると思うんだけど、本作はもう圧倒的後者で、思えば初めて「クール」という概念に出会った作品だったかもしれない。一部のアレなキャラ以外はほぼ全員がすげー冷めてて、物怖じせず、表情一つ変えず冷静にツッコむ作品だった。
 それが新鮮で、格好良く思えて、変な憧れを覚えたりしたものだ。 
 なんだか妙に学校に行くのが楽しみになるような作品で、ここらへんの影響なのか、「やっぱ学園物は学校に行きたくなるような内容じゃないとダメだよなー」という基準が俺の中にある。


 一番のポイントはそのクールさだったのだが、とにかくすべてが衝撃的だった。
 当時の自分の中では絵が上手かったし、男もイケメンだったり、ちょっとエロい部分もあったりしたし、4コマなのにデフォルメ少なめだしセリフすげー多かったり、それに加え少女マンガの空気もあったりして、いろいろ感動してた記憶がある。もちろん、ギャグのセンスもずばぬけてた。ネガティブでクールでブラックでシニカルな作者の視点が独特だったし、馬鹿なことやるイケメンってのも当時は新しかったんじゃないかと思う(美女も馬鹿なことする)。少女マンガの絵柄でネタはブラック……ってのがセールスポイントだったのかもしれない。


 作者の新井先生もそうとう若かったんじゃないかと思うけど、どんな学生時代送ってたんだろうという疑問がいまだにある。単純に根暗なオタクグループに属するようなタイプだったわけではなさそうだ。よくはわからないがとにかく、圧倒的な同姓嫌悪のオーラだけはひしひしと感じられた。最近描いてた作品も無料で見れたときに見てみたんだけど、やっぱりなーと再確認した感じ。
 同姓の、女の、醜い部分が嫌で嫌で目に付いて目に余ってムカついて仕方ないって感情があって、それを誰かにグチる代わりに原稿にぶつけてネタにしてるイメージがある。というのは俺の勝手な印象だけど、読んだことある人はわかってもらえるんじゃないだろうか。
 中学生男子の間で受けてた少女マンガって、どんなだよって思われたかもしれないけど、根本的にそういう感じだったので、営業的なターゲットはともかく、作品としてはむしろ男の方を向いていたように思うし、俺らの間で流行ってたのってわりと自然な現象だったんじゃないかと思うわけである。




【余談】
 古い作品だし、未読の人に薦められるものではないかもしれないけど、いまはKindle版とか出てるっぽいので十分に入手は可能。自分じゃもう客観的に判断できないんだけど、ギャグのセンスもたしかで、今でも読める作品だと思うんだよなー。
 俺の人生の中では『あずまんが大王(単行本一巻が2000年)』がでるまで本作が「すごい4コマ」の地位を守っていたので、面白い4コマとか研究したい人には一見の価値がある作品だと思う。間違いなくオリジナリティがある作品。
 これより後にでた『B.B.Joker』って作品なんかは完全に本作の同タイプで、男性原作と女性原画を組み合わせることで同じような「少女マンガ絵のブラックシニカルギャグ」をやっていたんだけど、二匹目の泥鰌を狙っていたのかはともかく*1、完全に劣化版だった。この件についてはすげー誰かと話したいんだけど共感してくれる人いねーかな。言葉遊びからネタ作るような浅い創作法はやっぱダメだと思った。センスの違いでこうまで差がでるんだなーと。
 最後なんか嫌味な感じになってしまったな。

*1:本作が泥鰌と呼べるほどヒットしていたかは不明だが

料理・グルメ作品感想会〜延長戦〜 『だがしかし』

 サンデーの新連載。駄菓子を題材にしたグルメ作品。
 最初は「ふ〜ん……(ギャグも上滑りしてる感あるし、いろいろ拙いなー)」くらいに感じていたのだが、二三週後にはすでに楽しみにしていて今や四大週刊誌内で『ハンター』と並んで一番レベルに待ち遠しい作品となってしまった。なんだかんだで連載始まると面白い『ハンター』と同じて……『ハンター』連載してなきゃ一番だよ。すごいな。いや、すでに『ハンター』を超えて一番楽しみかもしれない……。なのに一話8Pて……! いや、そこは6Pでもいいから最初そうだったように、あるいは『姉ログ』のように2話載せてくれよ……!


 最近、料理・グルメ作品をレビューしまくったばっかだけど、ここへ来てこうも楽しみなグルメ漫画*1が出てくるとは……。でも新連載で単行本もまだだから書影も載せられないんだよなぁ。それがすげー残念。ページ数少ないから単行本がいつ出るかわからん。一年くらいかかるんか?


 ど田舎で家が駄菓子屋やってる男の子のもとに都会から駄菓子マニアのお嬢様が訪ねてくるって話なんだけど、俺、人が自分自身の価値観で流行に流されず何かを楽しんでるのがすごい好きなんだよね。このお嬢様のキャラ自体は、けっこう典型的な「金持ちだけど庶民的」キャラで*2悪く言えばあざとささえ感じられてしまうキャラだし、漫画だということを理解した上でなお「こんな奴いねぇよ」と一蹴されてしまいそうなキャラなんだけどなぁ。でも唯一目が特徴的。瞳が小さくて三白眼気味なのは作者の特徴なんだろうけど、眼がぐるぐる〜ってなってて、ちょっとイっちゃってて危ない人感が出てる。さらに倒錯してる感じがあって、でも妙に魅力的なキャラになってるっていう。




 この、ちょっと頭イカれてんだけどまっすぐ情熱的で良いやつでもあるヒロインのお嬢様キャラが良かったね。身も蓋もなく平たく言うと涼宮ハルヒ(系)なんだけど。
 やっぱ、男はこういう女の子に振り回されたい欲求あるのかなぁ。かわいい。あとこないだ出てきた主人公が好きな幼馴染の遠藤サヤ。オーソドックスだけどあの回もグッと来てしまった。主人公くん周りの設定――漫画家目指してるとか、母親の姿が見えないとか――は、今のところ何も効いてないけど。


 駄菓子を紹介するグルメ漫画という設定が独特すぎるせいか、「駄菓子の販促広告漫画」みたいに見える。そういうのがあればこんなんじゃないかなーと。でも、グルメ一辺倒じゃなく、ラブコメ的な要素も出てきたし、実食シーンも見せ場として機能しているし、総じて満足。
 ちなみに、料理作品なら料理のメジャー度・マイナー度・創作難度、グルメ作品なら作中の料理を食べられる難度にはぜったいに注目したいわけだが、本作の場合……、


 作中料理入手難度:D(非常に易しい)


 駄菓子屋それ自体にはなかなかお目にかかれなくなった昨今だが、スーパー・コンビニのお菓子売り場には駄菓子コーナーが存在しており、有名どころは簡単に入手可能。そして当然駄菓子だけに安い。入手難度が作品の評価に直結するわけではないが、ダウナー(貧乏食)傾向にある今の時代なら入手難度は低い方がいいと言えるかもしれない。入手難度の低いものの弱点は「珍しくなさ」なのだが、駄菓子の場合「懐かしさ」なんかのプラス補正もあるし、本作では実に楽しそうに、おいしそうに食べていて読んでるこっちも食べたくなってしまうためその点は問題ない。
 しかしそうは言っても駄菓子によっては本当にマイナーなのもあって、食べたことないやつとか、手に入りにくいものとかあるんだよなぁ。味にヴァリエーションがある駄菓子でも一番メジャーな味しか置いてなくね? 「ブタメン」のとんこつ以外とか食べたことねーぞ。あと通販だと見つかる駄菓子もあるけど必然大人買いになってしまうしなぁ〜。大人になってもビールが苦手な俺は「生いきビール」を飲みたいんだけど、どの駄菓子も通販だと平均20〜40袋。家が駄菓子屋になるわ。


 そんなこんなで最近は、この作品読んでから、その回に出てきた駄菓子を買って食べるのが楽しみであり、習慣になりつつある。


  • 絵。上手いと言う人はいないだろうけど、女の子は少年誌らしい可愛さがあるし、人物の手には何やらこだわりあるいは真剣さのようなものを感じるので上手くなるタイプの人だと思う。上手くなることで絵の魅力が無くならなきゃ良いなーというおせっかいな心配をしてしまうのはそれだけ気に入ったから。

*1:料理するのではなく、現実にある食べ物を紹介・レポする系の作品。俺が勝手に言ってるだけだから一般的かどうか知らない。

*2:子どもの頃はおこづかいがパンピー並みに少なかったらしいが

料理作品感想会 4 『異世界食堂』

 異世界ものが多く占めることで有名なサイト「小説家になろう」の人気連載小説。
 異世界の住人がこちらの世界の洋食屋に迷い込み、高度に発達したこっちの料理を食べてめちゃくちゃ感動する……という話。基本、主役となる客は毎回別で、一話完結。


 自分達より下である、未発達な文明社会を見て優越感に浸る系というと言い方は悪いが、そんな感情をくすぐられる『テルマエ・ロマエ』的な鉄板設定である。この「優越感をくすぐる(俺TUEEE)」ポイントは「異世界転移もの」の必須条件として求められるところと言っても過言ではなさそうだ*1
 でもこれ、異世界とか言ったら色物に見えそうだけど、「幸福の再発見」をやろうとすればけっこう効果的というか、相性いいんだよな。生まれた時から恵まれた生活送っておいしいもの食べてるとどうしてもそれが当たり前になってきてしまうものだし、慣れてしまって輝きが失われてしまう。「日常系」寄りの作品の場合、その輝きに気付かせることが一つの課題・役割・目的だと思うのだけど、この設定だとその辺りの瑞々しい感動をわりと無理なく描くことができる。そしてそれを読んだ読者に価値を再発見させ、もう一度新鮮な気持ちでそれに触れさせられると……。
 いうわけなので必然的に描かれている料理は特別なものではなく、読者である自分達が普段食べてる・食べられるようなもの。こういうストーリーがあって、おいしそうに食べてる人がいると、自分もおいしく食べられるものだから、料理って味だけじゃないよなぁとつくづく。ちなみに俺は、「貧しい」「あまり食べたくない」という形で語られがちなカップラーメンをおいしそうに食べている作品・食べたくなってしまうシーンなんかが好きだ。そういう作品やシーンを料理別に集めればいつもよりおいしく楽しく食べられること間違いなしだろう。ビールと焼き鳥食べる前に『カイジ』読むとか。


 ここから少しネタバレ込み。
 アマチュアのネット小説なんてほぼ読んでないので、最初はいろんな不安や抵抗を感じつつちょっとずつ読み進めてたんだけど、くん、と面白さの針が大きく振れたと感じたのが*2、5話「ビーフシチュー」。これは、異世界でも王を通り越し、神的な立場にいるものすごい人にメチャクチャ気に入られている様を描いた回なんだけど、これが承認欲求をくすぐり読者を気持ちよくさせる。やり口は目新しくないんだけど、やはり鉄板。『トリコ』で小松シェフが世界の名立たる著名人に一目も二目も置かれてるのと同じやつ。これやられたらそりゃ気持ち良いだろうと。この「褒められ要素」を描くのも言うほど簡単ではないのだろうけど、本作は要となる「すごいやつ描写」にちゃんと成功していて、その分きっちり面白くなってる。
 そしてもう一つ、作品の人気を決定づけただろう話が、20話「モーニング」でのアレッタ登場回。ここで初めてレギュラーと呼べるレベルのメインキャラが増えるわけだけど、このアレッタは先の神様とは一転、極貧生活を送ってるホームレスなキャラなんだよね。つまり今度は「恵まれない子どもを助けてあげる」快感で攻めてくるわけだ。同じように優越感的なものを味わわせるのでも対称的な方法である。
 家もなくて仕事もなくて忌み避けられていて食べるものもないこの娘に、ちょっと優しく(こっちの世界では常識の範囲内)してあげるだけで、大げさに驚いたり喜んだりして、それが可愛い女の子なものだから、そりゃあまぁ、グッとくる。「アレッタちゃんきゃわわ〜」ってなって、「もっと喜ばせてほしい」「アレッタまた見たいなー」ってなる。んで、準レギュラー化したこの娘が期待に応える形でたびたび登場し、そのたび読者も気持ちよくなる。そして今では本作を支える立派な大黒柱になっている。


 基本的には一話限りのキャラが食べて感動するだけのテンプレ一話完結作品なんだけど、回を重ねるごとに再登場キャラが出てきたり、人物相関図が埋められたり、異世界の世界の話が見えてきたりして、楽しみが増えてくる。それに加え、「実時間と作中時間がシンクロしている」なんて小憎らしい仕掛けもあって、シンプルながら読み応えのある作品に仕上がっている。もちろん、毎回の食事描写も美味しそうに描かれてあり、グルメ作品としての基本的要求にも応えている(料理作品ではない)。


  • アレッタが大黒柱ということは逆に言うとキャラ人気に頼っているということだし、そもそもこの優越感要素も徐々に消耗していくものである。どちらもやがて飽きられるものであり、その点やや先行き不安である。が、余計なお世話というものだろう。
  • 実は、作中の客が作中料理の味に飽きるのではという心配もしている。人間って慣れてしまう生き物だからいつまでもみずみずしい感動は保てないだろう。それでもずっと最上級の褒め言葉を言わせ続けるとそれは「嘘」になるのではという気がする。
    • つまり、このまま続くと作品に「嘘」を感じてしまい、結果として俺が飽きてしまうのでは? という心配をしている。
      • でもそんな心配しなくていいかもしれないなぁ。ってくらいおいしそうに描いてくれてる。普段食べないコーヒーゼリーとかまで食べたくなってくる。
  • 異世界との扉が繋がっている以上、どうしたって文化文明は流入出してしまうし、世界に対して影響を与えずにはいられない。ふつうに考えれば『テルマエ・ロマエ』のように、システムや調理法・時として食材や調味料などは盗まれて当然であり、異世界で広まって当然。したがって現在連載中のような状態がいつまでも続くことはないはずなのだけど、さすがに、いまのところそれなりにうまいことその辺りへは踏み込まないようにしており、(たまに踏み込む)その辺は少々興味深く見ている。
  • つまり「異世界もの」特有の快感は基本いつまでも続く構造ではなく、一時のもの。いずれ「化けの皮」が剥がれるものなわけだ。ふつうに考えればいつか必要とされなくなる時が来るはずである。この作品の店主だって褒められてるし実際良い料理人なんだろうけど、『トリコ』の小松とは違い、格別にレベルが高いわけではないだろうし、世界には上がいるだろう。読者は神や王族に店主が褒められてると嬉しくなってしまうが、こっちの世界ではそのレベルではないのだから褒められすぎとも言える。そういう気持ち良い部分はいずれ醒める夢だ。そういったところが「異世界もの」の弱点の一つであり、摂理に反して続けようとするなら何がしか次元を上げていくような「展開」や引き延ばす「工夫」が求められるのだろう。
  • テルマエ・ロマエ』は時代間を自由に行き来できなかったり、「皇帝の命」という軸が設けられていたり、恋愛要素を取り込んだり、毎回違うタイプの風呂を扱ったりしていて、その辺り上手かった印象。作品が短いから摂理に逆らうことに成功したとは言えないけど。
  • 週一(土曜の0時)で定期更新されてんだけど、定期更新はすごい。読者側からしても助かるというか、安心感あるというか、やっぱでかいなぁって思う。特にこういうネット上のアマチュアのつづきものだと。このサイトも定期更新にできればいいよなぁ(「できれば」とか言ってるうちはやらない)。
    • 分量的にも、携帯にいれてちょっとした空き時間に読むのにちょうどいい。




  • 以上で料理作品感想会終わりー!
  • 書いてて気づいたんだけど、世の中には料理作品とグルメ作品とでちょっとジャンルが別れてんのね。ごっちゃにしてしまってたわー。意識低いな。
    • 他にも、知識をメインに描く本当に料理メインの作品と、料理を通してドラマを描くタイプの作品。凝った料理やマイナー料理を扱う作品と一般的なものを扱う作品なんかに分類できそう。これらを4象限マトリクスとかに書きこんだりするとちょっと面白そうだ。
  • なんか昔は、少年誌以外の料理ものなんて絵がめちゃくちゃ下手な人(ここで言うと『山賊ダイアリー』)がレポートor日記漫画みたいに描いてる印象があったんだけど、いつの間にかそんな印象もなくなる程度には増えたかな、という感じ。『山賊ダイアリー』はなんか許せたんだけど、『深夜食堂』的なのは絵柄で敬遠してしまいがちですよね。えへへ。
  • 他に書いた料理・グルメ作品の感想は『放課後のトラットリア』など。
  • 意外とトリコトリコ言ってた。
  • 最近は一話のみ一巻のみ無料ってのが多いからそういうので読んでみてもいいかも。自身の直感に従って買って当たり引いた時の感動は薄れるが。
  • どんな料理作品も、実食シーンがメインで、それまでがタメというか、助走というか、山に登る部分だよなー。ぜったいに実食シーンとその時の表情や感想を楽しみにしながら読んでるもん。で、その「タメ」の部分は作品のテーマや色によって違っていて、料理シーンだったり、薀蓄だったり、その他のエピソードだったりするわけだけど、こんなジャンルのものにも「型」はあるんだなーとか。

*1:ちなみに「異世界もの」という言葉はこうした「文化・文明の流入出」を含意したニュアンスで使われていると思われるので、転移していてもこれがなければ「ファンタジー」に区分されるのではないか。たとえば『十二国記』『今日からマ王』など(この二作品をほぼ知らないで言ってるので間違ってたら申し訳ない)。

*2:折線グラフ+ウソ発見器のイメージ

料理作品感想会 3 『くーねるまるた』/『甘々と稲妻』/『幸腹グラフィティ』

くーねるまるた 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
 くいしんぼ外国人の貧乏生活。料理漫画でもあり、グルメ漫画でもある。


 貧乏ものに必須の、「金がなくても楽しんでます感」を出すのに成功している。アパート暮らしなんだけど、ほぼ全員が女子&大学生くらいの人達でそれがまたちょっと楽しそうなんだよな(あんま交流もキャラ立てもないけど)。エアコンがないってことまで楽しもうとするポジティブさもあって読んでて気持ち良い。
 読んだ時、久々に当たり引いたなーって感じだったんだけど、マルタさんのキャラが良いってのがでかいかもしれない。そこまで突飛なキャラではないのだけども、彼女の、「何でもない日常を楽しんでる感」がすごい良いんだよなぁ。この作品の魅力はずばりそこだと思う。
 思い付きでふらっとその辺歩いてみたり、少し遠くに行ってみたり、貧乏なんだけど時間には余裕あるって生活をアクティブにめいっぱい楽しんでいて、心にもゆとりのある感じが良い。何をしてても楽しそう。風呂もエアコンもないくらい貧乏な生活ですら楽しさや喜びに変えてしまい、読んでるこっちが羨ましいとさえ思ってしまう。「貧すれば鈍する」という言葉はこのマルタさんには当てはまらず、彼女の生活は「楽しさ」で溢れてる。まさに『山賊ダイアリー』で言ったような作品だよ。『山賊ダイアリー』みたいなことができなくても、こんな風に人生は楽しめるはずなんだよなぁ。逆にこういう風に生活を楽しめない人は山賊生活も楽しめないだろう。


 しかしながら、このマルタさん、文学趣味も合わせて楽しみ方がけっこうマニアックだよな。
 やはり選択肢(金)がない中で楽しさを見つけようとすると、必然的に深く深くってベクトルになるらしい。


 そして作中に出た食べ物の「食いたくなる度」「作りたくなる度」はすごく高い。金かからず簡単そうってのがでかいかも。
 で、いくつか試してみたんだけど、レシピが簡潔にすぎて再現できてるのかもよくわからんし、作ったものがことごとくいまいちだったんだよな。「酒どん兵衛」とかお湯と酒1:1だと酒多すぎね? アルコールにむせながら食ったよ。そんで全部食い切れなくて、絶対フツーにどん兵衛食った方が良いなって思った。俺が酒に弱いのがいかんかったのか?
 「鶏皮入り特製チャーハン」もなぁ。油が出なくなるまで炒めたあの鶏皮、ちょっと苦味があったんだけど、俺の調理が悪かったのか……? マルタさんみたいな表情になれる料理を作るにはどうしたらいいの?



  • 桃のペリーニとか飲んでみたいんだけど……大丈夫だろうか?
  • 絵というか、画面というか、が『よつばと!』っぽい。
  • 「外人」というファクタがマルタさんの変人性を上手く隠してる感がある。日本人だとやっぱちょっと変な人だよねーって印象なんだけど、外人だとちょっと大目に見れる感あるのは何でだろう。外人だとしても変な人である気もするが……。
  • 全然料理じゃない回まであって結構フリーダム。料理<<<マルタさんだからこれでいいんだろう。




甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)
 「料理を楽しく作って美味しく食べられるっていうのはイコール幸せってことだよね」、みたいな作品。料理に幸福やら癒しやらを求めている『孤独のグルメ』と似た感じはあるが、別に作中キャラは直接的に幸せを求めて料理しているわけではない。ないが、「誰と」「何を」「どんなふうに」作ったり食べたりするのかが大事なんだと、テーマ的にはそう言っているように思われる。『鉄鍋のジャン!』風に言えば「料理は愛だ!」といったところか。単に美味しい料理が食べられれば良いってわけじゃなく、過程を大事にしている作品。味よりシチュエーション寄り。料理自体は特別変わったところのない一般的なもので、グルメ寄りではない。


 『よつばと』『高杉さん家のおべんとう』ぽく、男親+女の子な設定なんだけど、このまだ幼稚園児の子が天使すぎ&キャラ立ってて、この子にリアクションとらせるのはすげーズルいと思う。
 あとあれですね。「下手でもいいじゃん」っていう、言葉としては溢れ返っているであろう言説が、けっこうな実感を伴って感じられる。もともと物語作品という創作物の機能や得意とする部分の一つとして、「言葉だけでは伝えられないものを、言葉以外の方法で"わかる"ように伝え(られ)る」というのがあると思うのだけど、そういうの。良い作品はそういう面を持ってることが多い。言葉としては溢れて聞き飽きてるようなものをきちんと伝えたいと思ったらこうしたやり方しかないだろう。9話「おともだちとギョーザパーティー」は特にそこが伝わる話になっていて、すごく良かったなぁ。


 とにかく、第一話ですごい惹きつけられるものがあって、今の料理漫画作品では一番レベルだと思う。キャラもみんな良い奴だし、良いキャラしていて、なんでもないシーンの舌触りが良い。ちょっと癒されて、幸せな気分になれる。


 レシピはそこそこ詳しいんだけど、まだ作ってない。五平餅とか食べたいなー。



  • アフタヌーン的な意味でなんか繋がりでもあるのか、飯田小鳥というキャラの絵が若干『おおきく振りかぶって』を連想させる。口がでかくてこんな感じに>「〜」うねうねってなる。
  • 夕食作ることが多いから作って食べたら帰る時もう夜で外が真っ暗なんだよなー。だから毎回ラストはちょっと寂しい感じあるね。
  • 片親の設定だけど、めちゃくちゃ湿っぽいわけでもない。ドライでもないけど。



幸腹グラフィティ (1) (まんがタイムKRコミックス)
 一巻だけ読んだ。日常系。絵は上手いんだけど、う〜ん……あんまり。



本当にこんな感じ
 これも『食戟のソーマ』同様、美味しいもの食べてる時の描写をエロく描いてる作品なんだよな。こういうことに対して違和感や抵抗感がない人には狭量だと思われるかもしれないけど、俺はちゃんと描いてほしいんだよね。何がしたいんだと思う。おいしそうな料理をおいしそうに食べてる様子を描いて、「俺も食べたいなー」って思ってもらえるような漫画を描きたいんじゃないのか?
 でも本作は美味しそうに食べるんじゃなくエロく食べてる。何がしたいんだと。そういうウケ狙いは求めてないんだよなぁ。拾い物を貼らせてもらうけど、これ*1を思い出した。
 もう少し、真面目に向き合ってほしいんですよね。そこ一つだけで本作が不真面目と言うのは良くないんだろうけど。


 詳細なあらすじは書かないけど、内容としては、きらら系の「ほのぼのと癒されるような人と人との触れ合い」×「萌え豚に媚びるようなエロ描写」&「主要キャラ全員女」って感じだろうか。
 一巻を一回しか読んだことない奴がこんな批判して何なの? って感じだけど、エロ描写以外のストーリー面もそれほど……って感じだった記憶……。そう、もう印象の記憶しかないレベル。逆に言うと、さほど印象に残らなかったとも言える。
 でもこういうのは、楽しく読んでる人達の感想や言い分の方が正しいと思います(褒めてる意見が正しいってことではない)。


 レシピ的なものはなかったと思う。


*1:大昔にふたばかどっかで拾ったネタ画像。更新日時を見ると、06年12月30日となっていた。年末に何やってたんだろう。

料理作品感想会 2 『ネイチャージモン』/『食戟のソーマ』/『山賊ダイアリー』

ネイチャージモン(1) (ヤングマガジンコミックス)
 これも料理ものではなく、グルメものだね。ちょっと毛色が違うね。
 しかも本作、主に虫とりパートとグルメパートに分かれてるからグルメ漫画とも呼びにくいんだよね。でもそのグルメパートがけっこう面白いんだよなー。


 ダチョウ倶楽部の寺門ジモンを「ネイチャー」とか言いだしたのは『やりすぎコージー』というTV番組で、そのとき俺はただ笑ってただけなんだけど、今になってこの作品読んだら寺門ジモンは凄いなーって。わりと本気で尊敬できる人間だなーって思った。本作でもジモンは「困った人」的な扱いや描かれ方をされてるし、ほとんどの人は「変人」として見るのかもしれないけど。


 ときに、「たくさん本を読んだ方がいいのか、本なんか読まない方がいいのか」って命題があり、それに対してはわりと意見わかれるとこがあるじゃないですか。本はたくさん読むべきだという意見はまぁわかるものだけど、『書を捨てよ町へ出よう』的な言い分もある。要は、本を読むことは「他人の意見に耳を傾け見分を広めること」であり、町へ出ることは「実践し、実感を得ること」なのだろう。本を読むだけじゃ実感を伴った経験って分からないもので、イソップ童話『ろばを売りに行く親子』みたいな具合にその場その場で流されるだけの人間になってしまうだろうし、ならないにしても得るものはないだろう。啓蒙要素のあるビジネス書やお笑い芸人やミュージシャンのサクセス本、それ系の新書なんかが最たるもので、読んでる時こそ分かったような気になるものの、意外と自分の身になっていないものだ。著者がその体験を通じて確信したことでも体験してない読者には信じられないものだし、けっきょく本読んだだけでは人間なかなか変われない*1。だから、本だけに頼って、本で知識を仕入れることを第一に考えてしまうのって必ずしも良いことではない。それは、ここ最近批判的に言われてる、「攻略本見ながらプレイ」と同じなんだよな。経験を通じて得られる「実感」って、大事なものなんだよね。何の話だ?


 俺は最近までその辺のことがわかっていなかったんだけど、わかってから読むと、この人はスゴイな、と思える。『やりすぎコージー』なり本作なりを見た人ならわかるだろうけど、この人、めちゃくちゃ実践型の人なんだよね。本を読むか読まないかは知らないけど、タイプとしては読まない系。行動派。完全に自分の理論で体鍛えたりしてる。「わざと雨に打たれる特訓」とか「わざと徒歩で長時間歩いて熱中症にかかってみる」とかわけわかんないし、子どもの修行かよと思うんだけど、「自分の限界を知るのは大切なこと。自分の限界を知らない奴は多い」という理屈はすごく腑に落ちる。だいたい、そういうことを知らない人達が急性アル中で倒れたりしてるわけだし。
 で、自分で考えて行動した結果、そこで間違えても、失敗してもいいわけだ。正解を教えてもらって上手く立ち回ろうとするよりずっと良いわけですよ。それは、失敗していた方が後々得をするからなんてことじゃなく(もちろんそれもあるけど)、なによりそっちの方が「自分の人生を生きられる」から。「自分で考えて自分で選んだ自分の人生を生きる」ということの価値は、説明しにくいけどわかる人にはわかるものだと思う。逆に、周囲を気にしたり真似したりしながら上手く立ち回って上手に生きて、恥のない人生を送れたからってそれに何の価値があるのかと。そんなふうに思える人は本書を楽しめるのではないでしょうか。


 そんなわけで、グルメ漫画なんだけど、単に実在する名店を紹介しているだけの作品じゃなく、タイトル通り「ネイチャージモン」の作品なんだよね。この人の価値観人生観が感じられる。そしてそれがなかなか魅力的で、料理の方も魅力的に見えるという。
 料理の方がついで、みたいな文になってしまったけど、実際そうかもしれない。いやでもホントに料理もおいしそうだから。それにここで紹介されている料理はその店が潰れでもしない限り100%の再現度で食べられる。この点はグルメ漫画の良いところだ。





食戟のソーマ 1 (ジャンプコミックス)
 否定的に見ている作品。
 現在のジャンプはスタートダッシュにさえ成功すれば1〜3年ほどは連載が保てる状況であり、本作もそのレールに乗った作品だと思うが、逆に言うと、軌道に乗っただけで、それほど面白い作品であるとは思えない。自分の中では『べるぜバブ』と同じあたりにカテゴライズされてる。良いスタートダッシュがきれたのは、洗練された絵の上手さと一発ネタとしては機能したエロ演出あたりがでかかっただろう。


 しかし本作は一言で言うと、「体裁だけ整った作品」であり、ドラマ的な面白さはほとんどないと感じている。
 いかにもな主人公や、わかりやすい高慢お嬢様ライバルなど、キャラは少年漫画らしく、またキャラ萌え的な要素も備えているのだが、どうにも薄っぺらい。とくに主人公はいただけなくて、どういう性格かを説明する際、「少年漫画の主人公っぽい性格」と言うのが一番伝わるようなキャラになっている。困ってる女の子がいれば助けるし、勝負の後は爽やかに言葉を交わすし、努力家で負けず嫌いだし……というのは少年誌の主人公としては合格なのだろうけど、テンプレで味気なく「お前のオリジナリティはどこなの?」と思う。いちおう、「失敗を恐れず、失敗を次に活かす」というキャラづけはされてるのだけど、それだけでそれほどキャラが魅力的に映るわけでもないし、さほどフィーチャーされてないしそんな失敗してないし際立ってるわけじゃないし、テーマとして扱うにも陳腐にすぎる(扱い方の問題か?)。


 そしてもう一つ良くないのが、料理&料理描写。バトル系料理漫画らしく、まず食べられないだろう派手な料理がそろい踏みしているが、一つ一つの料理描写があっさりとしていて実にもったいない(美味しそうな料理はある)。カタルシスもなく、印象にも残りにくい。これは演出の問題と、展開の速度を重視しすぎた結果だろう。ジャンプの連載作品では打ち切りを恐れるあまり展開を急ぎ過ぎて面白さが減っているタイプの作品が珍しくないのだが、これもそのタイプだ。
 あと本作は『鉄鍋のジャン!』における大谷日堂的リアクション芸人がいないのでカタルシスに欠けるというのもある。バトル系料理漫画における「敵」の役割比重を、料理人より審査員においた『鉄鍋のジャン!』はそこがすご偉い。本作も、キャラの立ったライバルを出すより、キャラの立った審査員を出すべきではなかったか。


 否定的な意見にあまり筆を割くのもなんなのでこの辺で。料理ではなくエロで引きつけようとしたり、料理描写があっさりだったりキャラも薄っぺらかったりで、全体的には熱量が少ないというか、情熱のなさを感じてしまう作品なんだよな。小奇麗にまとまってるだけじゃつまらない。田所恵vs四宮あたりは良かった気がします。





山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)
 「猟生活始めました」な実話エッセイ漫画。
 猟師っつったらおっさん〜じじぃを連想するとこだけど作者とそのグループのメンバが若いんだよね。若い奴らで固まって自給自足したりしてるから冒険感がある。『十五少年漂流記』的な。だからその辺の設定勝ちというか、設定からして魅力的だし(実話だけど)、憧れる人は多いだろうと思われる。一人ならきついかもしれんけど、仲間がいるとやっぱ楽しいだろうなーと思うな。
 あと『黄金伝説』内の「一カ月一万円生活」における濱口優でもあるというか、未読の人にはむしろこっちをイメージしてもらえるとわかりやすいのかもしれない。あんな感じで、獲物が取れた達成感やら豪勢な食材を豪快に食べてるとこを追体験できるものが面白くないわけないよなぁ。フィクションで言うと、初期『トリコ』っぽいか。


 「自給自足」や「プロの仕事描写」とか面白い要素はいくつかあるんだろうけど、この『ヒエラルキー逆転』要素というのは、この手のジャンルでなくても面白いに決まってるし、俺自身好きな要素なんだよね。この場合、平民が高級食材を安く入手して腹いっぱい食いまくってるところにカタルシスがあるわけで、近いところで言うと、銀座の飯屋の残飯食ってる舌の肥えたホームレス。
 それに、これと同じような話でも農業なんかだと大変そうなんだけど、こっちは獲物が獲れなくても食っていけなくなるわけじゃないし、起きてる時間のすべて割いてるでもないし、そういう、ほとんど趣味の領域にある「気ままさ」というのも良いなと思えるとこ。アウトドアとかべつに好きでもない俺ですらちょっとうらやましく思っちゃうくらい。いやむしろ、こういうことしてこなかったから憧れがあるのかもしれない。


 でも本来、「楽しさ」って都会にも田舎にも、どこにでも転がってるものだし、この人の真似したからってこの楽しさが味わえるわけじゃないんだよね。逆に言うと、誰だって自分の身近な、手の届く範囲でこういう楽しさは見つけられるし、実際そういうエッセイ漫画で売れてる人もいると思う。だから珍しい話ってだけで売れてるわけじゃないんだよな。本当に楽しんでるから面白い作品になってるんだろうし、ハンパに真似するくらいなら自分が本当に楽しめるものを探すべきなんだろう。それはそうと、こうして食材入手の経緯から描かれるとどうしても「食いたい」とは思ってしまうんだけど。


  • この人のじーちゃん。すげーキャラ立ってる。荒川弘百姓貴族』のとーちゃんと似てるな。キャラの立ち方が。
  • 絵が上手いとかじゃないんだけどスッポンの描写にはやられたね。「美味すぎて寝れない。舌がスッポンのダシを求めてる」ってやつ。
  • 調理法は一応書いてあるんだけど、作れねぇっつうの。燻製あたりは作ってみたい気もするけど。スズメの焼き鳥も店のは食えるんだろうけどなぁ。
  • 当然ながら、イノシシ食いたくなる漫画だよ。鹿も食いてー。鹿は『銀の匙』でも食ってたしなー。

*1:同じ著者の本を何度も、何年も読み続けるとかすれば話は別かも

料理作品感想会 1 『孤独のグルメ』/『高杉さん家のおべんとう』/『きのう何食べた?』

 料理作品の感想をまとめてアップだ!
 年末の「今年読んだ作品」みたいな記事でアップしようとしていた古い文章も混じってるんだけど、そっちはなかなかアップできそうにない(いずれしたい)ので、とりあえずこういう形で。
 料理作品だから読む、ってことはべつにないんだけど、惹かれるものがあるジャンルなのも事実で、なんだかんだ溜まってたこのジャンルの作品感想を企画モノっぽくまとめてみようかなーって感じやね(脈絡のない東條希口調)。
 ネタバレなしなので、未読でも平気です多分。


孤独のグルメ【新装版】
 それほど熱心な読者ではないのでいま出回っているコミック一冊しか読んだことないはず。


 おっさんがひとりで飯食って、独り言という名のリアルツイッターかましつつ郷愁に帰ったり物思いに耽ったり横柄な店長にアームロックかけたりするだけの渋い作品なわけで、そのままでは、「これのどこが面白いの?」という人多数だったのではないだろうか。


 思うにこれは、言葉のチョイスを始めとしたおっさんのどこかズレた調子が面白いわけだが、これがいわゆる「シュールな笑い」的なものに当てはまる代物で、普通に読んでたら理解できない。これを面白く読むには、本作のどこがおかしいのかを逐一拾ってツッコミを入れていけるだけの感性を持った人達の存在が不可欠であり、そういう人達がいたからこそヒットしたのだろう。ごく少数の、作品を斜めに読む視点を持った人たちがネット上でネタにし、そうしたフィルターを一枚噛ますことでようやく面白さが一般人にも伝わるようになったのではないかと思う。


 自分自身、ネットでネタになっていたから読んだ口であり、先入観なしに読んでいたら面白いと思えていたかわからない(「なんだこの漫画」くらいには思ったかもしれない)。先入観なしに読んでみて自身の感性を試してみたかった気もするが、紹介されてなければ100%読んでなかっただろうしなー。


 同じタイプの作品としては、『テニスの王子様』なんかも似たところがあるように思う。一見ネタに見えないものを調理して提供してくれる料理人のような読者を介してようやく食べ方がわかるという……(むりやり料理に絡めてうまいこと言おうとした)。そして下手したら作者はウケ狙いのつもりで描いてなかったりする可能性もなきにしもあらずんば虎児を得ずみたいなさー。ホント、どういうつもりで話作ってんだろう。


 それにしても本作はその面白さを言葉で説明しにくい作品だよなぁ。ゴローちゃんはあくまでちょっとズレている感じなだけで、極端な変人ではないし。そう……変人ではないんよ。だから「何とも表現しがたい」という、本来の意味での「微妙」な味わいの作品なんだよなぁ。


  • あ、これ、料理作品じゃなくてグルメ作品だな。
  • 前にも言ったかもだけど、ドラマは(少なくとも漫画の再現としては)受けつけなかったです。枯れ過ぎてて。制作サイドは若者が枯れたおっさんを見て笑ってると思ってんのかね。
  • 料理の話してない! 「いくらどぶ漬け」とか食べたかったけど店潰れてたんだよなー(特別そこでしか食えないものではない)。食べたい料理はわりとあったようなそうでもないような。
  • 一人焼肉はやったことないけど、やっても良いかなとは思ってる。一から十まで一人でやったときってそれが「一人で焼肉に行く」みたいな小さなことでも一人でできたことに対する妙な感動ってのがあると思うんだけど、本作はその辺の、一人でいるときの妙に情緒的になる感じがよく出てる作品だなぁと思いました(真面目感想)。



高杉さん家のおべんとう 1
 三十歳くらいの独身男がとつぜん中学生女子を引き取って育てることになった話。その中で一緒に料理しておべんとう作ってっていうやつ。
 ひとつの王道の型であると思うのだけど、この手のギフト型、あるいは救済型成長ストーリーというのは好きだ。本書が売れた要因ってこの設定がでかいよねと思う。


 「ギフト型成長ストーリー」というのはいま勝手に名付けてみた。「一人の冴えない人間や悪人が、ある日突然手のかかる厄介な荷物を背負わされるんだけど、苦労するだけの面倒な荷物だと思われたそれが本当は主人公にとってのギフトであり、その出来事をきっかけに成長していく……」的なパターンの話。そのギフトがここでは久留里という中学生の女の子というわけだ。この系統のギフトは小さい子どもが多い印象。「子育ては親育て」なんて聞いたことがあるけど本当にその通りなんだろう。自分より知識も経験もなく学ぶところなんてないと思ってしまうような子どもであっても、関わることで見えてくるものというのがあるということらしい。
 ただ、それは本来、安定した仕事や財力があったり健康だったりその他もろもろの条件をある程度満たした人間が結婚して子を育ててはじめて得られるものなわけだから、それらを経験せず得ているのが「ギフト」だし、形式上は主人公側が助けながらその実こちらも救われているというのが「救済」なので「ギフト・救済型成長ストーリー」とか名付けた。わかりにくいか。


 本作と似た作品として『うさぎドロップ』や『よつばと!』あたりが連想されそうだけど、あれらの主人公は最初から立派にやっていた様子なので「ギフト」ではない。価値観が変えられたり救われたりしているかもしれないけど、鬱屈を抱えて生きている人間がギフトによって浄化・成長するというこの定義からは外れる。『ドラえもん』なんかが当てはまるかもしれない。


 そうした「ギフト」だからこそ面白いと思うのは「弱い人間」や「持たざる者」でも救われる話を見たいと思ってるからだろうか。本作の主人公の高杉くんって、たぶんこの先なんとか上手くいい仕事に就いて、結婚もすると思うんだけど、それはきっと久留里のおかげなんだよね。小坂さんは久留里が現れる前から高杉くんを好きだったかもしれないけど、久留里がいなかったらダメだったのでは? って気がする(今後もどうなるかわからないけど)。色んなことが、上手くいかない人間だったんじゃないだろうか。そんな人間でも、ひょんなきっかけでギフトを得て変われる可能性があることを信じられるっていうのは癒しであり希望でもあるし、読者は作中の出来事を羨ましがるのと同時に「自分も毎日頑張ってたら何かいいことあるんじゃないか」って気分になることだろう。そういうわけでやっぱり鉄板の設定であると思う。平たく言うと座敷童か。


 ただ正直、本作に関しては作者の力量に疑問を覚えざるをえず、拙さを感じさせられることが少なくない。それは絵とかコマ割りとか、もろもろ全体的になんだけど、やっぱ大きいのはキャラと見せ方かなー。キャラは少々古臭く浅薄な感じがする上その作者だからこそ描けるというオリジナリティが感じられないし、毎回の料理やストーリーにしてももう少し印象的・劇的に描けるのではないかと思ってしまう。必ずしも悪いとは思わないけど、いま一つ料理が魅力的に感じられない気もするし……。


 でも、弁当・料理知識の他に大学のシステムや研究周り、出世のことなんかが軸の一つとして描かれてもいるので、そのあたりで興味深く読めなくもない。
 あとは小坂さんが可愛い。久留里も可愛いんだけど、こういう設定のこういう立場の年の離れた女の子が「ちょっと何考えてるのか解りにくいように描かれる」ってのはお約束みたいなもんだしな。小坂さんが可愛い。



きのう何食べた?(1) (モーニングKC)
 よしながふみ先生の作品を読むのは初めてなんだけど、すごい人だなーと感じさせられた。本作は、作者の人間性、あるいは人間力みたいのが色濃く出ている系統の作品。その人間力で読ませる作品であり、プロットで読ませる系ではない。


 料理漫画って、過去の想い出やその時期のイベントなど、ちょっとしたエピソードと共に語られるというのが一つの手法としてある。それがないと本当に料理するだけになり、起承転結のある「お話」にならないからって理由とかだろうけど、本作は少年誌的に「料理で問題を解決しよう!」ってほど大々的なレベルにはならない。
 本作は主に外で仕事するAパート、仕事終わってから帰りに買い物して家で料理して一緒に食べるBパートと別れてるんだけど、AとBの結びつきが弱かったり、問題が劇的に解決しなかったりする。
 で、俺はそこに強い「日常性」を感じたんだよね。
 ほんと本作は、これこそ日常系ってくらい紛れもなく日常系。「不思議なこととか超能力とか大事件大冒険がなくても世界って楽しいものだよ」ってのが「日常系」の一つのコンセプトだとしたら、それは性質的には反(アンチ)少年誌、大人なものだと思うんだよね。少年誌だとやっぱ「○○を賭けて料理でバトル!」とかやっちゃうわけじゃん。本作は本当に、ほとんど劇的なことが起こらないし、起こらないまま一年二年と時間が経ってる。
 そういう、何でもない話でもきっちり作品になるよう描けているのがすごいと思ったし、こういうのを描けるってこと自体が大人だよねって感じがした。単に「何もない」のがすごいってことじゃなく、それを成り立たせられるだけの感性を持っているところにすごさを感じるということ。つまり、この作品を見てると作者は、「生活する」ってこと自体に楽しさや喜びを見出してるんだろうなって感じるわけです。で、何でもないような日々を大事に思えるところに人間的円熟味を感じると……。若いうちはやっぱ八神月くんみたいに「退屈だ」って思っちゃうわけですよ。


 本作はゲイのカップルが主役の話であり、それらにまつわる云々が主軸の話でもあって、一応縦軸は存在する。一応というか、立派に存在している。それが時折影を落としたり、ドラマティックに展開したりもするわけだけど、読んでるとやっぱ日常系なんだよね。そこの設定が少し特殊なだけで、ドラマティックな展開はあるけど突飛なことが起こるわけではないという。だから縁のないゲイカップルの話であってもリアルなものに感じられるし、ついていけない・振り落とされるということがない。すばら。


 カップルだけどかならず一緒に料理するわけじゃない。片方は料理得意で、そいつがメインで作る。で、もう一人がそれを美味しく食べる役割である……と。
 そして本作、なんというか、おいしそうに食べてもらえることで何かが救われてる感じがすごい伝わってくるんだよな。作る側が特別深刻な問題を抱えてるとか、嫌々作ってるとかじゃないんだけど、「おいしい」って言ってもらえたとき、確実に「何か」が救われている。そういうの見て、「なんかいいな」って思う。そんな作品です。
 ああ、つまり本作は、「料理」や「食卓」という視点で二人の関係を切り取ったり、そこに象徴させたりしたラブストーリーとも言えるのかな。ゲイは描けてもゲイのベッドシーンを描くわけにはいかないもんな。


 料理に関しては、家庭的かつ実用的。この漫画を見て十分に作れるレベルだし、なかなかおいしいのではないでしょうか。俺は煮込みハンバーグが気に入りました。シャーベットも作りたい。