料理作品感想会 3 『くーねるまるた』/『甘々と稲妻』/『幸腹グラフィティ』

くーねるまるた 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
 くいしんぼ外国人の貧乏生活。料理漫画でもあり、グルメ漫画でもある。


 貧乏ものに必須の、「金がなくても楽しんでます感」を出すのに成功している。アパート暮らしなんだけど、ほぼ全員が女子&大学生くらいの人達でそれがまたちょっと楽しそうなんだよな(あんま交流もキャラ立てもないけど)。エアコンがないってことまで楽しもうとするポジティブさもあって読んでて気持ち良い。
 読んだ時、久々に当たり引いたなーって感じだったんだけど、マルタさんのキャラが良いってのがでかいかもしれない。そこまで突飛なキャラではないのだけども、彼女の、「何でもない日常を楽しんでる感」がすごい良いんだよなぁ。この作品の魅力はずばりそこだと思う。
 思い付きでふらっとその辺歩いてみたり、少し遠くに行ってみたり、貧乏なんだけど時間には余裕あるって生活をアクティブにめいっぱい楽しんでいて、心にもゆとりのある感じが良い。何をしてても楽しそう。風呂もエアコンもないくらい貧乏な生活ですら楽しさや喜びに変えてしまい、読んでるこっちが羨ましいとさえ思ってしまう。「貧すれば鈍する」という言葉はこのマルタさんには当てはまらず、彼女の生活は「楽しさ」で溢れてる。まさに『山賊ダイアリー』で言ったような作品だよ。『山賊ダイアリー』みたいなことができなくても、こんな風に人生は楽しめるはずなんだよなぁ。逆にこういう風に生活を楽しめない人は山賊生活も楽しめないだろう。


 しかしながら、このマルタさん、文学趣味も合わせて楽しみ方がけっこうマニアックだよな。
 やはり選択肢(金)がない中で楽しさを見つけようとすると、必然的に深く深くってベクトルになるらしい。


 そして作中に出た食べ物の「食いたくなる度」「作りたくなる度」はすごく高い。金かからず簡単そうってのがでかいかも。
 で、いくつか試してみたんだけど、レシピが簡潔にすぎて再現できてるのかもよくわからんし、作ったものがことごとくいまいちだったんだよな。「酒どん兵衛」とかお湯と酒1:1だと酒多すぎね? アルコールにむせながら食ったよ。そんで全部食い切れなくて、絶対フツーにどん兵衛食った方が良いなって思った。俺が酒に弱いのがいかんかったのか?
 「鶏皮入り特製チャーハン」もなぁ。油が出なくなるまで炒めたあの鶏皮、ちょっと苦味があったんだけど、俺の調理が悪かったのか……? マルタさんみたいな表情になれる料理を作るにはどうしたらいいの?



  • 桃のペリーニとか飲んでみたいんだけど……大丈夫だろうか?
  • 絵というか、画面というか、が『よつばと!』っぽい。
  • 「外人」というファクタがマルタさんの変人性を上手く隠してる感がある。日本人だとやっぱちょっと変な人だよねーって印象なんだけど、外人だとちょっと大目に見れる感あるのは何でだろう。外人だとしても変な人である気もするが……。
  • 全然料理じゃない回まであって結構フリーダム。料理<<<マルタさんだからこれでいいんだろう。




甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)
 「料理を楽しく作って美味しく食べられるっていうのはイコール幸せってことだよね」、みたいな作品。料理に幸福やら癒しやらを求めている『孤独のグルメ』と似た感じはあるが、別に作中キャラは直接的に幸せを求めて料理しているわけではない。ないが、「誰と」「何を」「どんなふうに」作ったり食べたりするのかが大事なんだと、テーマ的にはそう言っているように思われる。『鉄鍋のジャン!』風に言えば「料理は愛だ!」といったところか。単に美味しい料理が食べられれば良いってわけじゃなく、過程を大事にしている作品。味よりシチュエーション寄り。料理自体は特別変わったところのない一般的なもので、グルメ寄りではない。


 『よつばと』『高杉さん家のおべんとう』ぽく、男親+女の子な設定なんだけど、このまだ幼稚園児の子が天使すぎ&キャラ立ってて、この子にリアクションとらせるのはすげーズルいと思う。
 あとあれですね。「下手でもいいじゃん」っていう、言葉としては溢れ返っているであろう言説が、けっこうな実感を伴って感じられる。もともと物語作品という創作物の機能や得意とする部分の一つとして、「言葉だけでは伝えられないものを、言葉以外の方法で"わかる"ように伝え(られ)る」というのがあると思うのだけど、そういうの。良い作品はそういう面を持ってることが多い。言葉としては溢れて聞き飽きてるようなものをきちんと伝えたいと思ったらこうしたやり方しかないだろう。9話「おともだちとギョーザパーティー」は特にそこが伝わる話になっていて、すごく良かったなぁ。


 とにかく、第一話ですごい惹きつけられるものがあって、今の料理漫画作品では一番レベルだと思う。キャラもみんな良い奴だし、良いキャラしていて、なんでもないシーンの舌触りが良い。ちょっと癒されて、幸せな気分になれる。


 レシピはそこそこ詳しいんだけど、まだ作ってない。五平餅とか食べたいなー。



  • アフタヌーン的な意味でなんか繋がりでもあるのか、飯田小鳥というキャラの絵が若干『おおきく振りかぶって』を連想させる。口がでかくてこんな感じに>「〜」うねうねってなる。
  • 夕食作ることが多いから作って食べたら帰る時もう夜で外が真っ暗なんだよなー。だから毎回ラストはちょっと寂しい感じあるね。
  • 片親の設定だけど、めちゃくちゃ湿っぽいわけでもない。ドライでもないけど。



幸腹グラフィティ (1) (まんがタイムKRコミックス)
 一巻だけ読んだ。日常系。絵は上手いんだけど、う〜ん……あんまり。



本当にこんな感じ
 これも『食戟のソーマ』同様、美味しいもの食べてる時の描写をエロく描いてる作品なんだよな。こういうことに対して違和感や抵抗感がない人には狭量だと思われるかもしれないけど、俺はちゃんと描いてほしいんだよね。何がしたいんだと思う。おいしそうな料理をおいしそうに食べてる様子を描いて、「俺も食べたいなー」って思ってもらえるような漫画を描きたいんじゃないのか?
 でも本作は美味しそうに食べるんじゃなくエロく食べてる。何がしたいんだと。そういうウケ狙いは求めてないんだよなぁ。拾い物を貼らせてもらうけど、これ*1を思い出した。
 もう少し、真面目に向き合ってほしいんですよね。そこ一つだけで本作が不真面目と言うのは良くないんだろうけど。


 詳細なあらすじは書かないけど、内容としては、きらら系の「ほのぼのと癒されるような人と人との触れ合い」×「萌え豚に媚びるようなエロ描写」&「主要キャラ全員女」って感じだろうか。
 一巻を一回しか読んだことない奴がこんな批判して何なの? って感じだけど、エロ描写以外のストーリー面もそれほど……って感じだった記憶……。そう、もう印象の記憶しかないレベル。逆に言うと、さほど印象に残らなかったとも言える。
 でもこういうのは、楽しく読んでる人達の感想や言い分の方が正しいと思います(褒めてる意見が正しいってことではない)。


 レシピ的なものはなかったと思う。


*1:大昔にふたばかどっかで拾ったネタ画像。更新日時を見ると、06年12月30日となっていた。年末に何やってたんだろう。