赤川次郎『赤川次郎ショートショートシリーズ3 幻の恐竜』
全体的にリアリティがなくて、イマイチ乗り切れなかった*1。あんま細かい所に目くじら立てて非難したくはないのだが、乗り切れなかったもんは仕方ない。
ところで、赤川次郎のショートショート三冊を読んでみて解った彼の作風は、以下である。
- "浩子"と言う名前の女性が多い(三、四話出た)。
- みんなこぞって川で入水自殺しようとする。
ネタバレあり
なくした雨傘
◎
「私、あなたと話すきっかけが欲しくて傘を盗んじゃったの」
というのは笑って許せそうな微笑ましげな軽犯罪だが、これがもっとエスカレートするとヤンデレと化す。
馬鹿げた生き方
童話だ。もちろんこれに「リアリティがない」と突っ込む気はない。
幻の恐竜
"恐竜"を出されてまで「恐竜が出るなんてリアリティに欠ける!」とは言わんが、別にこの内容なら恐竜じゃなくても良かったんじゃ? なんて感想が出るってことはやっぱ恐竜に不満を持っているようだな。
意思の強い男
食料全部が魚ってどんな出来の悪い机上の空論ミステリだよ。米くらいあるだろう。水も。
再会
一発ネタなのだが、一発ネタにしても強引すぎる。
むだ遣いの報酬
○
よもやこんな展開になろうとは……。奥さんも決して悪かった訳ではないあたり切ない。ラスト二行が良い。
とは言え歯を抜こうとは思わんよな。
白鳥の歌
訓話だぜ。
人のリアクションを見ないと自分の歌のレベルが判らない人間はいない、ましてや上手い人なら尚更な訳で、若干童話めいた強引さだ。
茶碗一杯の復讐
○
うん。ちょっとコメントが思いつかない。パスだ。
昼下がりの魔法使い
いwきwなwりwラブホかw
そしてなんかいきなり家族が良い奴らになったー!
通
よく知りよく語り、周囲にも認められている人間が実は……。
意外と現実にもありそうな話だ。
ありふれた星
主人公君が死んだのでは? と思わせようとしたのだとすれば、失敗していると思う。いま一つ切れがなく、何をしたかったのかよく解らない話だった。
夏休み
○
しかし主人公くんは優しさからではなく、意趣返しのために休みを代わろうとしたのだということを考えると決して良い話ではない訳で、微妙だ。
奥の手
とても気分の悪い話だった。詐欺じゃん。殺人に発展してもおかしくない。奥さんの方は生活苦を訴えれば普通に離婚できたよね。全然奥の手じゃねぇし。こういうトリックを描きたかったとしても旦那の方を悪く描いていてくれれば胸のすく思いを味わえたかもしれないのに、何故こんな話を書いた。オチ自体は見えてたんだから旦那を良キャラにすることでオチを読まれまいとしなくてもいい。
仕事始め
まぁこの状況だとそりゃその格好で仕事行くしかないよね。
でも、何故お前だけ倒産を知らされてない?
命の恩人
こうなるとは思わなかった。ミスリられた。
ショートショートとは言え、ここまでお手軽に読める本はそうない。良いシリーズだ。
*1:『むだ遣いの報酬』や『茶碗一杯の復讐』のことではない。あれは「可能性の低いことが起こった」だけだし、それが作中で言及されているからいい