『Aチャンネル』、記憶にある印象よりずっと良い。

Aチャンネル (3) (まんがタイムKRコミックス)
 漫画を読んでみたんだけど、内容知ってた(期待してなかった)せいか意外と楽しめたし、むしろ色眼鏡を外してみたら結構悪くない作品なのでは? とか。読んだ時、他の癒しがなかったこともあって救われた節さえある。
 ネタはアニメと同じだし、アニメ時は正直つまらんなーとか思ってたし最後まで見てなかった。実際評価も良くなかったと思うし、アニメ終了後に話題に上がるのもほとんど観測しないし何かが語り継がれている様子もない。のだけど、今にして思えばアニメが期待されすぎてたんだろうなぁ。あの時期だったら絶対『GJ部』とか『ゆゆ式』許されてなかった。逆にこれらは本作のような作品があったからこそ叩かれてない気もする。


 可愛いキャラを可愛く描きたいという欲求をただまっすぐ素直に発露した結果の産物といった風の作品で、非常に安心する。あとこの手の四コマ作家は画力がなく絵が上手くないイメージあるんだけど、べつに絵下手じゃないし、思ってたより可愛らしく描けていてそこも良い。
 これを機にアニメも見直してみたい。

ネタ

  • 一話8ページ15本のネタで進行する。四コマだが個々の話はバラバラではなく時系列順に繋がっていて、誰々の家に泊まりに行く話とか誰と誰が喧嘩した話とか一話全体が一つの話になっている。典型的キャラ萌え四コマの作り。
  • キャラいじり寄り。四コマあるあるだと思うが、思いついたオチに合わせて無理に展開させているようなパターンがわりと見られる。
  • キャラがあらかじめ決められた動きしかしないように見え気持ち悪い時があるというのがこのタイプのデメリットか。逆にメリットはその作品・そのキャラでなければできないネタなので必然性がある。
  • ↑二つの理由でつまらないこともあるけど、ふつうに面白いネタもある(四コマなので浮き沈みあって当然だが)。悪くない!けっして悪くないぞ!!
  • 男キャラは変態保険医が一人出るだけ。

キャラ

 一番強い要素で言うと天然+幼馴染大好き+ツッコミ+いじられという四人。
 これに胸の大きさだの出身だの料理の腕だの家族構成だ運動能力だという要素で肉付けされている。以前の記事でラジオボタンとか言ってたが、有名どころから引っ張ってくるならデータベース的なキャラ作りだ(東浩紀)。それに加え、主要各キャラの個性(胸の大きさなど)をそれぞれ別にして「幅を持たせる」とか、一人だけ差別化して「強調する」とかの方法でより楽しい掛け合いが生まれるような土台作りをするのがこの手の作品の作り方だと思う。
 で、本作の土台作りが上手くいっているかどうかだが、主要四キャラに限ればひとまず悪い部分はないように見える。一人異物のトオルが特別目立って美味しいとこ持って行きすぎてるでもないし、『けいおん!』のむぎや『らきすた』みゆきのように不人気だったり影薄かったりするキャラがいるでもない。
 あとなんか、ちょっと『けいおん!』に似てる気がするが、存続させなきゃいけない「部活」がないため本当に大きなストーリーの生まれる要素がなさそうなのが一番の違いか。

るん


 天然・アホの娘と言えばキャラ要素としてはよくいそうなのだけど、実際の天然ぷりが思ったより良い*1。主要四キャラの絡みだとこの娘がちゃんと中心にいて安定感がある。この娘がいればちゃんと回る。あれ? こっちが主人公だと思ってたけどトオルのが主人公か?
 ヅラかぶったり、髪型変えたりという変装にもなってないようなちょっとした変化だけで「誰!?」ってなるネタってけっこう多いと思うんだけど、「そのくらいで誰だかわからなくなるわけねーだろ」という気持ちがどうしてもある。でも、るんの前髪下ろしたバージョンはそれらのネタの中でも最高度に納得度のあるもので、本当に「誰だよ!?」て気になった。たぶん初めて。

トオル


 この娘がるん以外の先輩二人と仲良くやってるor可愛がられているの見ると和むのでそこを押して欲しい。ただ、「勉強できる優等生」という要素はあんま良い方向に効いてないかも。一年組の話になった時はこの要素が距離を生んでいて関係性を邪魔してる気がするし……。『けいおん!』もそうだけど、ぼっち化対策に別グループを用意する際、そっちでの立ち位置とか関係性も上手いこと作らないといけないので難しくなる。本作はここが失敗してると思う(後述)。

ナギ


 可愛い。
 基本ツッコミだけどたまに暴走的になったり、メガネで男言葉だったりとほとんどの要素が被ってることから『あずまんが大王』のヨミの子孫というか、同系列の娘だと言うのは言うに及ばずだけど、ヨミから巨乳といじられ要素を抜いたのがナギって感じなんで、ナギのキャラはやや弱いんだよな。いじられ役はユー子が持ってっちゃってる。
 トオルに対して一番先輩っぽさが出ているキャラだと思う。ちょっと悪そうな雰囲気もあるし、たしかにこのキャラは先輩にした方が活きるかもしれない。
 にしても、男から見て全然太ってないどころか寧ろ望ましいむっちり度の女の子が体型と体重気にしてるのって鉄板だなぁ。ふつうに可愛いのに男にモテないとか言ってるのと同じ類のキャラ付けだと思うけど本作は男出ないからな。
 本作の場合、脚とかもっとムチムチしてても良いと思うけど、作者の人は基本細いのが好みなんだろう。

 

ユー子


 この娘も天然要素があり*2、たまにるんの役どころを奪っていく。発端が天然ボケかセクシャルな話かはともかく、顔を赤らめている時が可愛いというキャラだろう。
 ただ、「トオルに嫌われてる」という特殊さがあるかと思いきやあまり効いてないし、大阪要素もほぼまったく効いてないし、巨乳美人にもかかわらず男にモテてるシーンもないしで、どうにも何か足りてない感が拭えない。性格良い娘というのはポイント高いが。
 個人的にはナギとキャッキャウフフする方向で伸ばしていって欲しい。

一年ズ

 トオルの同級生二人(ユタカ・ミホ)の効きが恐ろしく悪い。ユタカは『あずまんが大王』でいう「とも」、『けいおん!』でいう「純」、『WORKING!!』でいう「山田」と類するうざキャラ、かき回しキャラに相当するのだが、まず可愛さが足りない。本作のような典型的萌え四コマの作品の場合、可愛さを描くことそれ自体が面白さを描くことと直結するわけで、すべてはキャラを可愛く見せるために用意されているべきだと思うのだが、可愛くない。巨乳・敬語要素についても上手いこと可愛さ・面白さに繋がっているとも思えない。
 で、元々ユタカとペアだったミホは自然ツッコミタイプになるのだが、トオルに絡むユタカをミホがツッコみトオルに謝罪するという構図はトオルから自律的な動きを奪っている。本来はトオルがもっと露骨に嫌がる動きをするべきなのにそれをさせないことで二人とトオルの間にかなりの距離感ができてしまっている。
 ストーリー的にはそれで正しいとも言えるわけで、上手いと表現することも可能だし、今後の展開でこの距離が縮まっていくのかもしれないが、現時点で見ていて楽しくないというのは致命的だと思われる。

*1:ユー子・ナギ喧嘩回の「ちゃんと口に入れた?」とか好き。

*2:将来の夢:お嫁さん