キシマ先生の静かな生活

まどろみ消去―MISSING UNDER THE MISTLETOE (講談社文庫)


レタス・フライ』を読んだので、ふと思い返して森先生の第一短編集『まどろみ消去』収録『キシマ先生の静かな生活』を再読。
こうやって一度読んだものを読み返す、というのはその作品が価値のあるものだった、ということだろう。

ラストで衝撃を受けたということだけはおぼろげに覚えていたのだけれど、幸か不幸か話の内容はすっかり忘れていて、
ほとんど新鮮な気持ちのまま読むことができたと思う。こんなに短い話だったんだなー。
以下はネタバレになるのだけど、
楽しかった日々の時が過ぎ去ってしまった切なさは勿論、
神聖視している憧れの人の身に何か良からぬことが起きているのに、連絡がとれない、確かめる術もない、というもどかしさが苦々しい。
現実のきしみが神を打ち壊したという萩尾望都先生の言も実に的を射ていて素晴らしかった。