2014年01〜03月期アニメ感想 4 『のうりん』/『キルラキル』
作者の一作目である『らじかるエレメンツ』読んで、こんなパロネタ多いとアニメ化できないんじゃないかとか思ってたけどぜんぜん大丈夫だった。でもパロネタは評価が分かれる部分だよね。おまけに時期的に『銀の匙』と比較されがちだったと思うだけどどうだったんだろう。方向性は違うと思うが。
ギャグとシリアスがすげーテンポよくまとまってて、わりと幸福なアニメ化だったんじゃないでしょうか。原作未読の人は本命『銀の匙』に大きく水をあけられると思っていたと思うんだけど大方の予想を裏切って真面目に農業してたしね。原作のあとがきによると、ちゃんと農業高校に取材に行って、色々勉強した上で真摯に書いているらしいのでちゃんと評価されてほしいし、していい出来だったと思います。『銀の匙』の方は原作者が本職だったからね。稀有な経験は情報発信できる側になると金になるね。いや『銀の匙』との比較はいい。
ギャグは特別本作に限ったことじゃないんだろうけど、やっぱ『はがない』『俺妹』みたいに、「ここまで来たかー」「ここまでやるかー」て感じ。女体盛りがどうとか、携帯電話じゃないバイブがどうとか、アニメでやっていいんだぁってなる。
ラノベってホースの先を絞って水の勢いを強くするように特定年齢層に対してのみのアピールを強くした作風じゃないですか。そういう意味で「18禁」ではないにしても「一般向け」でもない。だから主流になった今もどっかしら異質な部分は残ってるのは当然なのかもしれない。昔の主流作品はラノベじゃなかったから、やっぱ普通に一線守ってる感じがあったというか、ここまで際どくはなかったよなぁ。
でも下ネタが過剰になっただけと言えばそれだけの話で、貞操観念なく付き合いまくったりやりまくったりしてるわけじゃないからそういう意味では少年誌的なラインは越えてない。今も守られてる一線はあると言えるか。そりゃそうだよな。そこ越えたら青年誌だもん。
あとやっぱ単なる青春学園ものではなく、農業というものをテーマにしてると、現実的な問題にも踏み込んでいくわけで、軽々しく書けなくはなるだろうけど深みはでるよなーてとこか。農業は現状も未来も決して明るいものじゃないみたいだけど、そういうのをこうした作品を通して学べるのはホント良いなと思います。ギャグ・萌えに加えて知的好奇心を満たしてくれるって支柱があるのはでかいし、強みだよな。
- ラノベって一冊(250〜300p)をアニメ3〜4話で消化するのが一般的だと思うんだけど、5話か6話あたりは原作では30Pくらいしかないところを一話かけて消費してて、すげーってなった。四天王だかお祭りあたり。
- 前も言ったように俺はSDキャラ化するのあんま好きじゃないんだけど、横から解説入れる時にSDキャラが出てくる分にはあんま気にならないし、いい使い方だったかも。
- みのりが嫌われてるらしいけど、ぜんぜん嫌うことないと思うんだよなー。現れたライバルと戦おうと思ったらあんな風にもなるだろうし、そもそもみのりは耕作の恋のために気を利かせて手紙書くとか、これ以上ないくらい塩送ってるわけだし。真正面から頑張って戦ってるのに当の耕作からはけっこうひどい扱いされてるわけだし、そんなに嫌うほどか?
- 対して、可愛面白い先生だと思ってたベッキーの扱いがひどすぎて悲しくなったという意見には「ご愁傷さまです」と言いたい。
- ベッキーがアラサーじゃなくアラフォーって設定は絶妙だよなぁ。『やはり俺の青春ラブコメ〜』の平塚先生とかはいかにもって感じで、ベッキー見ちゃうともうぬるいよね。いや、わかるよ。売れ線狙いウケ狙いで中二病枠の材木座を配置したように、年上好き枠用の萌えキャラとして安定の女教師を配置、しかも定番の「美人なのにモテない」設定。わかるよ。だからこそそこから一歩踏み越えたベッキーはなんかすごい魅力的なキャラですよね。なんかもう、「モテない」とか「結婚したい」とかの焦りや痛々しさがリアルに感じられるもんなぁ。アラサーだと「うざ!」「あざといっ!」「まだいけるだろ」ってなる。
- 林檎は都会の象徴なんだろうけど、あんま都会関係ない感じだな。対立してなくてただの外の人間、驚き役にしかなってない。いいけどね。
- あ、好きなキャラはマネー金上で。今更だけど、いちおう好きなキャラは書いていこうという方針で感想書いてる。
- 原作読んでもいいけど、二期待ってもいい。昔はアニメが終わったら原作買うって流れが主流だったんだろうけど今は原作買わずに二期待ちってケースも増えてそう。
いやはやー、熱い! 楽しい! 面白い! シンプル! イズ! ベスト!! って感じ。なんかもう、今期一番面白かったレベルだと思うけど言うことないな。やっぱ2クールだと大作感あるというか、目立つね。存在感がある。それだけで話題になれる。それでいて面白ければなおさらよ。
本作の演出って、キャラの名前が出る文字演出・カメラの映像が妙に古い二色のやつ・生命繊維(?)が光る演出……と大きく三つあると思ってんだけど、あの生命繊維がキラキラキラッて光る演出(SE込み)がズルいくらい格好良すぎるんだけど、何アレ何アレ。格好良すぎだろ。
あと文字演出ね。俺は細田守の『デジモン』『サマーウォーズ』などに見られる「みんなで力を合わせる」展開が好きなんだけど、本作もハムスターみたいに走ってエネルギー充填するシーンでこれまで出てきた各部の部長たちが総出演するじゃないですか。あそこで文字演出がされてるがゆえに「みんなが集まってる感」がすげー出てて、さらに「みんないるよ!」ってセリフがあって、「うぉおおおぉおお!」ってなった。いいなぁ。あそこは良かった。熱い。あくまでサポート的役割に留まった活躍というのも絶妙。
やっぱ「勢いで納得させる。勢いでぶっちぎる」「面白い方向へ舵を切る」を徹底した極致のような作品だと思う。展開にたいして理屈で折り合いをつけようとしたりして色々考えてるうちに面白さの勘所が見えなくなり、外してしまう作品というのは世にたくさんあると思うので、「どうしたら一番面白くなるのか。熱くなるのか」をちゃんと第一に考えている本作は良い教科書だと思うんだよね。「何を一番大事にしてるか」がわかりやすい作品は結構あるけど、本作が大事にしてたのは明らかにそういうとこだった。
もっと言うと、「なんだかよくわからないものが集まったら強い」だとかその辺のテーマ的なものすらあってないようなものだった気もする。龍子闇堕ち時の鮮血との会話とか、服がどうこうとか、セリフで主張してる部分の方は大して面白くないし、無視していいんじゃないかと思うくらいだ(暴論)。あれって正義側と悪側をそれらしく描き分ける意味合いくらいしかなかったんじゃね? くらいにしか思ってない。
そしてそういった、「見て楽しい! ……けど後に残るものがない」後味スッキリ作品な上に綺麗に終わったので、忘れられるのが早そうな作品である。後々語られる機会がなさそうというか……。
- 流子闇堕ちあたりの展開は微妙な感じはあったね。あそこは龍子に感情移入できないとこだからなぁ。主人公を闇堕ちさせる作劇は感情移入対象がいなくなるという意味で危ないのかもしれませんね。
- じじいの紅茶に少しずつ盛られた毒の効果がいつ出るのかとドキドキしてたんだけど、まったくそんなことはなかったね。でもあの見せ方だと絶対そう思うよな。あれ完全に伏線の描き方だったぞ。わざとか?
- 微妙に一抹の不安が残るエンドというか、龍子が人間ではないという問題が解決されてないというか。ちゃんと寿命で死ねるんですかね。寿命ですら「死ねない体」だったらちょっと可哀想なんだけど……。
- 大気圏から落ちてくる龍子を受け止めなくても死なねーんじゃねーのってちょっと思っちゃいましたよね。むしろ受け止める側のが危険な気もするし。
- 猿投山がラストバトルで目を開くとことかさー。金男が船見送るところとかさー。良いよなー。熱いわー。
- 龍子は可愛いなぁ。最初に鮮血纏ったときに、恥ずかしそうに顔赤くしてたとこでこう……ぐっときた。男勝りながら可愛いところもあって、良いヒロインだったと思います。
- テニス部部長も微妙に好きである。
- この期は『ズヴィズダー』もやってたこともあって、キャラが本当に際どいレベルで露出することに対しての感覚が麻痺してた感ある。