2014年01〜03月期アニメ感想 1 『ウィッチクラフトワークス』/『いなり、こんこん、恋いろは』/『未確認で進行形』

 07〜09月期、10〜12月期の2クール分すっとばしてのアニメ感想。そっちは後回しだ。
 やっぱ鉄は熱いうちにというか、早い段階で書かないと書けなくなる。3〜6話分くらい見た段階で書き始めるのが良さそうなんだけど……。



ウィッチクラフトワークス 3 [Blu-ray]
 うーん、すごいなー。
 一応、メチャクチャすごい力を持っているらしい多華宮君の封印が解けるとか解けないとかの縦軸があり、その力を目当てにした人たちが集まってきてトラブルが起きて……みたいな核はあるんだけど、存外あっさり解決しちゃったり、緊張感がなかったりして、それがメインになってる感じがまったくしない。
 まずメデューサが出てきたときに、もっと大変な戦いになるかと思ったのだけどあっさり終了、しかもその後メデューサはかくまわれコメディ要因みたいになっちゃったし、ラストの戦いはそれなりだったが、かざねお母さんは余裕で復活してたし、クロノワールも戦えば楽勝で勝ってたみたいな格付けが(戦闘後にだが)なされていて、良いのか悪いのか『最強の弟子ケンイチ』にも似た妙な安心感がある。悪く言うとドキドキハラハラしない。


 方々で言われているだろう何の面白味もない評価をしてしまうと、「本編はそこまで面白くないけど世界観のセンスが圧倒的で見ていて面白い作品」なんだよな。楽しい。
 たとえば、素人が陥りがちな創作の罠に、自分で考えた設定を一から十まで披瀝するというのがあり、おそらく漫画や小説の編集者を日夜辟易させているものと思われるけど、本作は説明しないタイプの作品だ。説明をせずに、映像で表現する。
 まず、「晴れ時々校舎」であるとか、「バスの行き先が"次は DEADEND"になる」とかのセンスが良い。これはおそらくまったくそうする意味のないものだ。『HUNTER×HUNTER』なら、「相手に宣戦布告しなければならない制約だからそうした」、みたいな理屈が入るところだろうが、そういうのではない。見映えが良いからそうしてるだけだ。「多華宮君が町を救った後エヴァーミリオンの世界から紛れた無数の花びらが街中に舞う」とか「クロノワールの結界(?)内で魚が泳いでる」とかも同じだ。映像に訴えかける見せ方をしていて画面が映えるしユニーク極まりない。なんかこの「画面が映える」って結構大事だなーとか思うわけですよ。


 さらに言うと「説明しない」のみならず、「触れない」作品で、家の中で動いてる熊のぬいぐるみとか、たんぽぽちゃんのケモ耳だとか、日野輪冥の犬マフラーとか、多華宮(母)がなぜ家の中でまでOLの制服着てるのかとかを誰も彼もが総スルーする。そのためなんか遊園地にでもいったかのように、あっちにもこっちにも気になるものがある感じになっていてなんとなくワクワクしてしまう。エヴァーミリオンの世界にコミカルなペンギンがいるとか、とにかくセンスが爆発している。
 キャラもそれぞれ容姿込みで立ってるし、本当感心するなぁ。すごい。
 余談だけどこの辺すごく『K』に似ている。あの作品も過剰な設定を言葉で説明せず映像で語る作品だったし、スクリーンセーバーみたいな壁紙とか、お掃除ロボとか面白いものもあった。
 他に、『とある魔術の禁書目録』の鎌池先生と似通ったセンスを持っているのではという気もする*1。でも『禁書』と違うのは語尾口癖に頼ったキャラ作りをしてないところかな。『NARUTO』とかもそうだけど、喋りの語尾(ex.「〜じゃん」)でキャラ付けすると一気にうざくなってしまうからそこは好感持てるんだよなぁ(『禁書』は小説だから台詞で判別つくようにそうしてるというのはあるにせよ)。


 で、そこにアニメ化に際しての良作画(3DCG背景と組み合わせるとかも含む)とか、良OP&ED&挿入歌(カラオケシーン)とか良声(たんぽぽちゃんとか)とか良演出(高山vsドンフライの再現とか)のもろもろが上乗せされて、そういうのが好きな人にはすごく楽しいものに仕上がってたように思う。『キルラキル』があるので今期一番面白かったとは言いにくいが、間違いなく新しくはあった。


 そうなってくるとやはりストーリーのB級っぽさが気になるのだけど、なんだろうね。設定とか過去話もよくわからないから「ここは本来ならこう組むべき」みたいな話もできないけど、やっぱストーリーとしては面白くはないよね。だから「つまらない」という意見もわかる。しかしここまで演出やギミックで突き抜けてると、「それでもいいか」となってしまう。うぅむ。
 あ、ストーリーに関しても一つ言うと、やっぱ多華宮くんは色んなことをスルーしすぎ&話聞かなさすぎって気はするよね。謎のまま話を進めたい作者の都合だろうけど。そういうとこ無理あったよね。



  • 勝手に喋ったり音楽が鳴り出したりするサイト作りマジでやめろ。
  • 序盤の多華宮くんが苛められるあたりが微妙。異常な綾火age込みでちょっと無理があると感じたし、完全ギャグに振り切ってるでもないし、B級感すごくて辛かった。
    • 多華宮(母)イジメの方は、イジメの理由が語られない&演出がコミカル&速攻で解決>「お友達からお願いします!」……で、暗い過去をうまいことギャグで処理した感はあった。
  • 多華宮くんはいわゆるヘタレ系主人公で、ちょっと好きではない。同時にヒロイン属性も持ち合わせているが、「ヒロインだからこれでいい」とは思えなかった。
  • 多華宮(妹)の造形が妹キャラにありがちなロリロリした感じでなくて良い。
  • メデューサ様いいなぁ。人間フォルムのスーツ姿とかエロいし。デザインも秀逸。
  • かざねも良いし(巨乳なので)、無表情キャラの虎鉄も良い。おなじく無表情だけど綾火はあまり……。内容みるまで高校生とは思わなくて最初違和感あったな。
  • とくに拒否反応はないものの、やっぱキャラクターが装飾過剰気味だとは思う。日野輪冥とか、犬マフラーだけでも良さそうなのに眼帯もあるし、多華宮くんが実妹(?)を「霞ちゃん」って呼ぶとか、かざねの敬語口調とかはちょっと強すぎる気がする。
  • 象徴的だと思うんだけど、こんな感じで細部とかキャラばっか語っちゃう作品なんだよなぁ。
  • EDのダンスの虎鉄のとこ、すごい好き。「ここ超すき」ってなる。
  • 声優陣豪華じゃね?



いなり、こんこん、恋いろは。 第3巻 [Blu-ray]
 最初に、威厳たっぷりに登場したうか様が乙女ゲーで自らそのイメージを崩壊させたところでグッと来た。実に良い掴みだった。
 しかしあれは掴みのみならず、キャラ付けとしてもすごく良かった。なぜならあれが単なるギャグとしてのキャラ付けではなくて、ストーリー上の必然性と密接に結び付いたキャラ付けだからだ。つまり、うか様は「ちゃんとした恋愛」がしたいから架空の恋愛ゲームにハマってしまったという、これ以上ないくらいしっかりした理屈がある。そこが素晴らしい。うか様は可愛いというのは認めた上で、キャラ自体がメチャクチャ立ってるとまでは思わないけど、でもこれが正しいキャラ付けだなぁと思ったね。
 逆に兄貴の中二病設定はギャグのためのキャラ付けにしかなってなくて、ちょっとなって感じ。中二っぷりもステロタイプで、こんな奴いねぇよって感じだったしなぁ。中二病キャラって大抵そう。もっと「どうしてそうなったのか」という必然性がほしい。


 ちなみに、うか様と乙女ゲーの出会いは本編で描かれていたが、うか様は乙女ゲーにハマる理由はあっても、ゲームにハマる理由はない。にもかかわらず乙女ゲー以外のゲームも嗜むゲーマーになっていたのは、(作者の都合として)兄貴と一緒にゲームで遊ぶシーンが欲しかったからだろう。ちなみのちなみに、兄貴のメイン趣味がゲームでないのは、うか様と遊んでやってる感を演出するためだろう。本編で描かれてたように、ゲームが好きだから一緒にプレイしたんじゃなくて、気になるうか様が一緒にやりたいって言うから付き合ってやってんだよーという具合にしたかったのではないか。ニヤニヤするね。


 気になったのは、話としてキレイじゃないような気がしたこと。
 まず、変身できる能力があって、いなりの意思とは無関係に発動する神通力があって、神通力がないと会えないうか様と神通力を返さないと消えちゃううか様がいる。
 この変身能力は元来の魔法少女的なノリで(戦わない魔法少女ね)、騒動を通して「こういった力を使うのはよろしくないこと」「魔法(神通力)では本当に問題を解決することはできない」的な教訓を得る。
 二番目も同じだ。これは、力が使用された時点ですでに「いけないこと」であるのは理解していた。
 しかし、神通力を返すとうか様に会えなくなるから返したくない。
 結局、うか様の死には替えられず神通力を返すわけだけど、これはうか様が消えちゃうのが嫌だから返すってのが一番の理由なわけで、神通力は持て余すし必要ないと思ったから返すってのが一番の理由ではないよね。
 けっして物語文法マンセーではないけれど、文法に沿う作りにするのであれば、「チートは良くないから返す」とか「神通力は便利だけど、うか様の方が大事だから返す」とかのがキレイな気はする。でも俺、すごい難しい注文を言ってるかもしれない。


 あと全体的に少女マンガだなぁって感じ。原作者の先生は女性のようだ。海回とか「ラブレター渡して」からの一連の流れってすごい少女マンガ性を感じた。グループに新しい友達入ったけど一人だけ反りが合わなくてあんま喋らない奴いるとか、『やはり俺の青春ラブコメ〜』でも似たようなのあったけど、ちょっとリアルで目新しい。作者的にはクソみたいなキャラは作りたくなかったと思うんだけど、その点ラブレターはけっこうきわどいとこだったなぁ。
 それに雑魚神たちはけっこうクソな奴らばっかだったし、わりとドロっとしてる。
 そもそも変身して問題解決>一件落着って流れじゃないからそんな気持ち良い作品じゃないよな。


 しかし、アニメの方はもう完全に終わった感あるけど、原作ってどうなってんだろう。どっからオリジナルに分岐したのかちょっと気になる。
 結局うか様の恋愛問題にはけりがつけられなかったけど、これはあくまでいなりが主役なのと原作未完なのとで仕方ない部分もあるか。


  • コンが可愛いですね。そんな凝ったデザインではないんだけど。
  • どうしても『かみちゅ!』を連想してしまうな。あっちは「神」になることに決定的な障害とかないし、他の神達も人当り良いんだけど。
    • いや、ホント似てる。



未確認で進行形 vol.3(初回生産限定版) [Blu-ray]
 人気作品には人気キャラが一人くらいはいるものだ。そいつが出てきただけでコメントが伸びるようなキャラが(ニコニコでも2chでも)。
 で、本作にはそれが二人いるのがすごい。たしかに、『レールガン』の黒子にせよ『銀魂』のさっちゃんにせよ、変態キャラって面白くするのが簡単だしよく動いてくれるし、よほど失敗しなけりゃ良いキャラになってくれるものだと思うけど、下手するとソイツが人気No1になって全部もってっちゃいがちになってしまう。でも本作はそれを超える真白を生み出してるんでその時点でけっこう勝ち確定してるよなぁとか。
 そのぶん、主人公カップルが地味なんだけど、白夜の方を(開き直って?)地味キャラとして扱ってるのは正解だったかもしれない。


 異種族間恋愛ってたいてい悲劇を予感させるものだけど、その大きな原因って文化の違いや寿命の違いだと思うんです。その点、本作の白夜たちは人間の文化に溶け込んでるし、寿命も変わらないみたいなので障害・問題を感じさせない。テーマ的にはあってないようなもので、それよりはむしろ「無口で何考えてるかわからない」性格の方がクローズアップされてる。結局、ちょっと変わった恋人と仲を深めていくだけの話になってるよなぁ。別記事で「オチをつけてほしい」とか言ったけど、これ設定に対して必然性のある落とし方するのむずいよな。ホント、身体能力スゴイですよくらいのアイデンティティくらいしかない。食う・食われるの歪な関係もないし、『有頂天家族』のタヌキたちより人間やってる。



  • 小紅の男口調てちょっとしっくり来ない節あったよなぁ。
  • 紅緒は良いキャラなんだけど、ちょっと動きに変化が無さすぎて、後半は伝統芸か懐かしい一発ギャグでも見てる気になった。その他の変態キャラ同様、ワンパターンになりがち。
    • これに関しては、真白の動きも変わらないというのも気になった。嫌なのが変わらないとしても、抵抗するのに疲れたようなところを見せるとかあってもよかった気がする。変化が欲しい。
    • OPのちょっとあきらめ入ってる感じは好き。
  • UMA云々ての、いまいち意図がわからないな。
  • 主人公二人の関係性が「付き合ってから」っぽいのはなんか良かったね。しかも家族や友達公認の感じが。
  • 紅緒(CV.松井恵理子)の演技、メリハリや遊びがあって良かったですね。

*1:『禁書』も『レールガン』もロクに見てないんですけどね