2013年04〜06月期アニメ感想 2 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』/『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』/『DEVIL SURVIVOR 2 THE ANIMATION』

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 良かった(最終話見た直後)。
 あやせが告白してくるとこからが桐乃ルートと言えただろうけど、そこからの展開が桐乃エンドに必要なものを無駄なくこなしていて、かつ、キャラとストーリーが自ら動きだしているかのような自然さがあって、大変美しかった。
 あやせ・黒猫・麻奈実……とついでに加奈子をふって、桐乃に告白して、だけどいくとこまでいっちゃうわけじゃなく、あくまで青春の思い出として爽やかに終わり双方ともに兄妹離れする……っていうのは桐乃ルートを考えた時点で順当に思いつくエンディングだろうし、最初はそのつもりじゃなかったとしても、こういうタイトルとして始まった物語の終わらせ方としては極めてまっとうだと思える。


 麻奈実とやりあってる最中も京介が土下座したりいつものトーンで会話してたりして暗く重くなりすぎずになってたとことか顕著だったと思うけど、やっぱキャラの動きが自然で……正直本作のシリアスって、シリアスありきでドラマ作られてるなって感じてる部分がこれまでにはあって、一期のカラオケ店での喧嘩とか特に不自然だなーって感じてたんだけど、今回はそれがなかった。


 今期あらためて思ったのは、ラノベ(エンタメ)としてのラインどりが上手いというか、若干いきすぎてるようにも思えるあたりに思い切って一歩踏み込めるってのはやっぱ大事なことなのかなと。街中で告白とか妹と挙式とかその他もろもろ。「痛い」し「ありえない」んだけど、ニコニコとかで見てるとやっぱそういうとこで盛り上がってんだよね。きっと普通だったら常識で考えちゃってそこまで割り切ってやりきれない。もっと無難にまとめてしまう。
 たぶん本作はクライマックスの、一番盛り上がる部分から先に考える作り方が主なんだろう。そういう作り方が窺える作品は珍しくない。「ウェディングドレス着た桐乃をチャリの後ろに乗せて走るシーンを描こう」とか。だから失敗すると不自然に喧嘩始まったように感じたりする。そのちぐはぐ感・作者の都合で展開動かしてる感が初期は強かったんだけど、後半は上手く噛み合ってたってことだ。キャラが動き出したり、物語が走り出したりということがあってそうなっていったのだと思う。


 本作はかなり、作者と編集側が協力して作ったらしいんだけど、たしかに「今」「売れる」作品、「ラノベの王道」って作品だったなぁ。計算で作られたヒット作というか。同じことは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』や『僕は友達が少ない』にも言えると思うけど、「今売れるラノベ」の代表だった。一時代を築いたと言える作品だった。


 逆に言うと本作が終わったことでラノベ界隈の流れも変わりそうな気がするんだけど、さあ、どうなるか。


  • あと付け加えるとすれば、『はがない』の余談で言ったような点で、ヒロイン同士の譲り合いみたいなのが気になったポイントか。黒猫に関して「大好きで大事な友達の大好きな兄を自分も好き」という板挟みめいたジレンマがあるなら、その苦悩をもっと描いても良かったんじゃないかと思う。それ自体がドラマとして面白いし、それがないとなんかちょっと「は?」てなるよね。京介みたいに。
    • でも基本京介視点で話進むからそういうエピソードは描けないよなぁ。あくまでも「京介の話・京介から見た女の子の話」に終始させて「ヒロインの話」になるのは避けたかったというのもありそう。
    • 立場的にはあやせも黒猫と同じなんだけど、あやせはあんまそういうので悩んでる感じなかったね。黒猫には「桐乃に悪いと思わないんですか?」みたいなこと言ってた気するけど自分は……。
  • 京介は突然女の子が電波なこと言い出してもちゃんとキャッチボール続けるから偉い。絡みづらい声優さんとか相手にするそっち系司会者みたいだ。
  • 黒猫可愛かった。黒猫は普通の格好してる方が好き。
  • しかし、いくらゲームキャラと自分を重ねてるのだろうとは言え、「男向け妹系エロゲ大好き女子」って設定はやっぱありえなさMAXだよね。今や完全に慣れちゃってよくわからなくなってるけど、冷静に考えたら「どうなのよ?」って思う設定だよね。



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 近年*1オタク文化が広く肯定的に認知されだして、以前のように後ろめたさを感じることなくオタクを名乗ることができるようになったというのは大きなパラダイム・シフト*2だった。むしろ現在ではライトなオタクたちが増えすぎてしまいオタク間(年期入ってる層とライト層)での摩擦や衝突などが問題視されている段階だろう。
 さらには「中二」や「ぼっち」「ひきこもりニート」であることもさほど恥ずかしいことじゃなくなってきている。だいたい人種に名前が付けられるということは「そういう奴がいる」と認識されることであり、そのこと自体が「いてもいい」ニュアンスになるので、こうした言葉ができた時点である程度、社会に受け入れられていると言える。
 かつては、「工業開発」だの「大手企業就職して結婚してマイホーム」だの「世界救う」だのと努力したりイケイケアゲアゲだったりした。でも現在ではそれが「幸せって必ずしもそうじゃないじゃん」「そうじゃなくてもいいじゃん」と否定されつつあり、「エコ・省エネ」だの「草食系・干物女」だの「日常系」だの「無気力・がんばらない」だのと言った方向に思想が変化しているわけで、「中二」「ぼっち」「ひきニート」といったキーワードが市民権を得ているのもその流れの延長だろう。日本全体がダウナー化傾向にあるわけだ。
 そこで、そうした時代のそういう人種なりの生き方や解決方法だのを比較的肯定的に描こうとする作品が増え始める。本作もその一つだ。表面的には流行りの要素詰め込んだ売れ線ラノベだけど、本質的な部分ではこういう時代に出るべくして出てきた作品である。


 本作は問題に対する解決方法がリア充グループと対比して語られているため、そのテーマ的なものがわかりやすい。問題の解決方法がぼっち式だよーってわけだ。
 エンタメとして見ると「通常のお約束とは異なる解決方法で受け手を驚かせる」作品なのだが*3、これってきっと教師ものとかに同じパターンが多くて、『GTO』や、『伝説の教師*4』なんかがそうだった。「問題を抱えた人物の悩みをどちらが解決するか」という、間に他者を挟んだ勝負形式になっていて、直接的にリア充と対決しないのも同じだろう(テニス勝負はあったが)。
 要は、マニュアルVS破天荒の構図だ。リア充側は綺麗ごとのマニュアルアプローチで、外面は良いんだけど、本質的な解決はまるでできてない。反してぼっち側は、方法や印象は最悪なんだけど、本質的な解決ができているという対立。


 話は少し逸れるが、子どものころ読んだ、『ズッコケ三人組シリーズ』の『花のズッコケ児童会長』の中で、「子どもは外で遊ぶのが健全だと言うけど、スポーツが苦手で外で遊ぶのが好きじゃなくて、図書館で本を読むのが好きな人がいても良いと思います」みたいなこと言うシーンがあって、俺はすごく印象に残ってんだけど、世の中には「おかしな常識を押し付けられて苦しんでる人」というのが非常に多い。なぜそんな常識が出来上がっていくのかというと、そもそも人間が「思考停止したい生き物」だから。
 人間はなにも意識しないとすぐ思考停止したがる。「これさえ食べてれば健康になれるor痩せれる」とか「良い大学入って良い会社入れれば勝ち組で幸せになれる」とか、「こうしとけば安全」って思いたくて飛びつく。で、思考停止したい人間ほど、自分で考えずに「みんなに合わせてみんなと同じようにしてみんなと同じこと言ってれば安全」って考えて安心するわけだけど、これが画一的な姿勢やおかしな常識を蔓延させることになって、結果的に不自由で息苦しい、多様性を認められない社会を作りだしてしまってる。
 特にダウナー系の人間っていうのはアゲアゲの時代に否定されやすく、そんな時代が落ち着いた頃こういう作品が出てくるわけだ。
 つまり、本作は上記の「マニュアルVS破天荒」の構図の中に二つの主張(視点)を含んでいる。
 一つは、「ぼっちでもいいじゃん」「ぼっちでも大丈夫」という「マイノリティ肯定」。そしてもう一つが、「他者理解」の視点。「リア充も思ってるほど完璧じゃない」「勝ち組に見える奴らも見た目通りとは限らない」という視点で「ぼっち=負け組」という常識に異を唱えている。


 ただあくまで「ぼっちでもいいじゃん」であって、絶対的に「ぼっちがいい」ではないんだよね。「無理して付き合うよりはぼっちがいい」ってレベルの話で、できるなら友達や彼女は欲しいと思ってる。
 だけど、深く傷ついて挫折して、なかなか前向きになれないような人がいるわけで、本作は本来的にはそういう人達のための作品だろう。
 なので、最終的にはそういう人達に対して「もう一度だけでも手を伸ばしてみなよ」と言うような。そんな作品になったらいいんじゃないかと思う。本当に「ぼっちでもいい!」と言い切れるほど割りきれる時代にはまだなってないだろうし。
 八幡の「ぼっち式解決術」だって完璧に正しいようには描かれてない。これから先、八幡のやり方がもっときちんと否定されるフェイズってのは来ると思うので、おそらくそういう展開(「ぼっちでもいいけど、卑屈になるな」みたいな)になると思うけど。


 最後に別口から軽く語ると、本作ってまぁ、どっかで言われてたように、ぼっちが考える理想の、最高に格好良いぼっち、ってやつなのかな。
 基本は八幡が自己犠牲的に、自分が嫌われることと引き換えに問題を解決したり、誰かを救ったりしていくわけだけど、俺的にはどうも無理やり、不自然に嫌われてるように思えて気になってしまった。小学生編で八幡の意図を知って協力したはずのリア充サイドの人間(ヘアバンドチャラ男とか)がなんでまた文化祭編で八幡を酷い奴扱いしてんだよってなる。小学生の女の子も肝試しで直接絡まれてもない八幡を避けたのはピンと来ない*5。他のキャラにしてもそうだけど、「なにか理由があるのでは?」くらいには考えてほしいんだよな。


  • なんか出版側に作品略称をステマ的に流行らせようとする動きがあったとかなかったとかで*6、うざい。それなら「あとがき」に一言、「本作の略称はこれでお願いします」と書きゃいいだろうよ。本作の場合、ここにあるようなダブルミーニングであるなら無関係とも言えずまだ納得できるけど、『俺のリアルとネトゲがラブコメに侵蝕され始めてヤバイ』で『ネトラれ』とか文字拾って面白い言葉にしたいだけっぽいのは死ねやって思うし、やっぱ『俺ガイル』も強引すぎるから死ね。略称聞いて正タイトルわからんようなのは略称じゃない。『俺まち』にしろ。
    • でもこういうのに慣れると、『世界でいちばん強くなりたい』で『せかつよ』とか、印象に残らないし「つまらん」て思っちゃうね。「『せいよく』の方が良かったんじゃ……?」て思っちゃうね。
  • 最近だと『湯神くんには友達がいない』なんて作品もあって、これも本作と似てるぽいけどこっちはガチでぼっちでいいと思ってる。
    • こういうの強引にジャンル分けると「人間関係系」? 広いな……。
  • 本作、あんまキャラ萌え的な部分では上手くいってないよね。メインヒロイン(雪ノ下)可愛くないし、中二(材木座)要らんし、……。ショタ(戸塚)も腐女子(海老名)も二番煎じ感強すぎる。ハンコ絵ならぬハンコキャラじゃーん。
    • 戸塚くんとか完全に他人と違うこと言いたい構ってちゃん御用達用ですよね。「戸塚が一番可愛いだろー」みたいな。「あ、そういうのいいんで」って感じなんだけど、作品自体がそうなってるのがちょっと「うぅ〜ん……」て感じですよね。『ニャル子』の「ハス太」みたいに「だけどやっぱり男は男!」って扱いの方がしっくりくる。



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 うぅん。『P4』が結構好きだったし、同じ岸監督と聞いて見てみたんだけど、正直けっこうつまんなかったよなぁ。妙なストレスもなくそれなりに気楽には見れたけど、「めっちゃ面白い!」って感じることもないまま終わってしまった。


 『BLEACH』『D.Gray-man』系か。「オシャレ」で「シリアス」なんだけど、でも「生温い」という、「オシャレ」や「中二」要素でオタク・女子人気を得られないと打ち切られてしまう、よくあるタイプのダメシナリオ感あった。
 ゲームだったらそれでも良いのかもしれないし、本作も前作『P4』同様「ゲームっぽさ」を出そうと意識されてたようだけど、それが『P4』ほど快感には結びついてなかったんだよなぁ。
 その上「シリアス」パート。世界レベルの問題にもかかわらず描かれるのは主要登場人物周りばかりで一般人や主要キャラの家族が描かれないことで薄っぺらい印象になってる。
 そしてラスト付近が『P4』同様何言いたいのかわからないというか、何も伝わってこないというか、言葉だけでやり取りしてる感あって、凡百の、絵は上手いけど話つまらない漫画みたいな雰囲気が全体を貫いてた。
 もすこし細かく言うと、世界の滅亡を担う話がスケール大きすぎて感情移入しにくいとか、生死にスポット当てられた話作りや「悪」の描き方が安っぽいとか、主要キャラの平均年齢若すぎるのがちょっと……とかあったんだけど、中二作品の悪いとこ出まくってたなーという感じかな。
 今回のはバッドエンド的なルートが選ばれてたみたいで、たしかにEDのだんだん人がいなくなっていく演出は面白かったけど、悪い意味で人を殺せば面白くなると思ってるというか、そこしか見せ場が用意できてなかった作品という印象か。



  • 九条緋奈子がちょっとかわいい。……という、それだけの作品になってしまいそう。 
  • そういや本作って結構な乳アニメだったよなぁ。新田維緒の巨乳ぶりが凄かった。巨乳が凄いというより、どんな胸してんだっていう不自然な巨乳。菅野史も次点で。



*1:思うに『ハルヒ』・ニコニコ動画以降

*2:時代的な価値観の変化

*3:ちなみに、最近読んだ『子ひつじは迷わない』というラノベミステリも解決方法に重点をおいた作品だった。真実の暴露に力点を置くミステリだとなかなか新鮮なアイデアに思われた

*4:2000年、主演:松本人志中居正広

*5:原作読めばわかる?

*6:ソースは忘れた