2013年01〜03月期アニメ感想 1 『ヤマノススメ』/『まんがーる!』/『GJ部』/『ラブライブ!』

 なんかすっごい遅れた。


ヤマノススメ [Blu-ray]
 5分アニメ。ここ数年で急激に増えた印象の強い5分アニメだけど、何故こんなにも増えたのか。要因は多々挙げられそうだけど、TV放送にこだわらないネットアニメの普及と日常系作品の需要拡大あたりがでかい気がする。簡単に作れるし、作ればTVでなくても紹介できる。アニメ戦国時代の現代においては「短いから」という理由だけで見てもらえる可能性が高くなるし、実験的作品作りも可能でかつ新人スタッフたちの初仕事としても機能したり……と、このあたりは原作破壊要因にもなりやすいが。
 最古の5分アニメと言うと『鷹の爪』とか『ギャグマンガ日和』とか、低予算&詰め込み型のフラッシュアニメが思い返されるんだけど、ニコニコで『まんがタイムきらら』系の作品やりだしたあたりではその枠に収まらない形のものが出てきた。歌を長めに(30分アニメと変わらない)とって中身は四コママンガ二本分だけのうっすいものがあったり、作画がフラッシュアニメではなくなっていたり、声優が一人数役でなくキャラの人数分いたり豪華だったり……。
 で、本作&『まんがーる!』は『まんがタイムきらら』で染められていたニコニコアニメチャンネルにとってかわるがごとく新規参入してきた『コミック アース・スター』なるとこの作品なんだけど、この二つの出来がかなり良い。前作『てーきゅう』は面白いながらも従来のフラッシュアニメであったのに対し今回の二作は作画が良いのに加えストーリーも四コマ的ぶつ切り感がないまま(もともと四コマじゃない?)一話でキッチリとまとめられており、そのうえ単話完結ではなく話が続くし、EDの長さも中身の尺に見合ったほどよい長さで邪魔にならない(『ぷちます』や『戦勇。』は内容のわりに長い。それに対し『アーススター』系の作品はOPEDどちらかがないので尺詐欺になってない)と、これまでの5分アニメとは一線を画したエポックな作品と言っていいのではないかと感じた。


 つまり、これまでは「予算もないし作画も大変だからクオリティが低くなっても仕方ないよね!」だったのに、これらの作品は「予算もないし作画も大変だけど5分だけならなんとかなるよね!」あるいは「5分だけなら全力が出せるよね!」とばかりにどうしても低クオリティの印象があった5分アニメを30分アニメと同等かそれ以上のレベルにまで引き上げてる。30分アニメを5分アニメに押し込めているようで、「ああ、そうか、こういう方向に進化する道もあるのか」と目から鱗が落ちたような感心があった。「5分アニメだからこそクオリティを上げる」というのは完全な逆転現象であると思う。そのくらい本作は出来が良く、一つの作品としての完成度が高い。
 この内容とクオリティなら30分アニメでやって欲しかったと思ってる人は多いだろうがおそらく雑誌自体も若いものだし原作のストックがないのだろう。ただ逆にこのやり方ができるならほぼストックなしの状態で良作のストーリーものも宣伝できるわけで、上手くやったなと思う。『てーきゅう』からハズレなしだし、うざいと言われそうなくらいしつこい宣伝もネタとして好意的に受け入れられてるし、今アーススターが来てるかもしれない……!(とは言えアニメ化作品全部、女キャラオンリーの萌え系であるのは気になる)


 肝心の内容は、「マイナー趣味もの」とでも言えばいいのか?
 人間って大人になるにつれ今まで触れてこなかったようなジャンルのものへの興味が強くなるもので、そこには長い年月生きたが故に鮮度の落ちてしまった世界をもう一度広げたいとか、世界の瑞々しさを感じたいとかの欲求があると思うんだけど、こういうのってよく知らない世界で知的好奇心が刺激されるものであれば何でもいいんだよね。「山」だから良いとかではない。むしろ題材より、いかに上手く、魅力的に紹介できるかが重要。
 で、「魅力的に紹介するには誰も知らないような深い知識を語る必要がある」と俺なんかは考えがちなんだけど本作は見るからにソフトな初心者向けなんだよなぁ。だけど、ソフトだからこそ逆にちょっとしたピクニック的な楽しい雰囲気が出ていたし、それが萌え+日常系とうまいことマッチして「気軽に見られる5分アニメ」として十全な仕上がりになっていた。実際山に行ってみたい気にもなったので趣味ものとしてのポイントもクリアしてると言っていいだろう。ああ、実在の山で話進めてるのがでかかったよね。高尾山、登りたくなったし(登ってない)。
 そして、近年評価の一ポイントとして定型句になりつつある「最近のオタク文化に毒されていない」作品で、女の子ばかり出てくるわりには安心して見れる作品であった。これは言われなきゃ『まんがタイム』系と思ってしまうな。
 あと、EDの『スタッカート・デイズ』が良かったのもポイント高い。



まんがーる! [Blu-ray]
 5分アニメに関して言いたいことは『ヤマノススメ』で言っちゃったから何も気の利いたことは言えないんだけど、面白かったです。
 『ヤマノススメ』同様のマイナー趣味・業界ものだし、女の子たちがみんなでなんかやる系と言えば珍しくも何ともない作品なんだけど、本作でやや特徴的かなと思える点はこれが部活や趣味ではなく仕事ってとこだ。題材故にそうなったんだろうけど、こんな和気藹々とした友人たちだけの職場とかすごい理想だよなぁ。高校生が学園もののコメディ見てたら「こんな学校生活いいなー。もしかすると明日からこんな感じになる可能性もゼロじゃないよなー、ならないかなー」って夢想してワクワクできると思うんだけど、いくら作品が面白くても高校を卒業してしまえばもうそんなレベルでの期待はできないわけで、そういう意味では今の自分に近い分、よりグッと来るシチュエーションではある。


 もう一つの特徴は、本作が、実在するコミックアーススター編集部を舞台としているところ。ややメタ設定。だけどもそれでいて実在の作品・作者は取り扱わず、その設定に反してフィクション性が高い。結果的にメタ設定がほぼ死んじゃってて、何がしたかったんだという気がしなくもない。当然かもしれないけど実際の編集部はおっさんばっかだろうし……そういう風に考えていってしまうと「所詮作り物か……」となってしまい空しくなってしまう気がする。
 ……というわけで本作は、「メタ設定で理想の楽園を描くことで、逆説的に現実の世知辛さや残念っぷりを強調しようとした作品」であると言える。
 まぁそれは冗談なんだけど、でもこれ真実でもあるよなぁ。同じような設定の『AKB49』だって実在アイドルたちとは絶対乖離してるから漫画を真に受けてファンになったらがっかりすると思うしさ。現実は非情である。



  • たぶんこっちの方が先なんだろうけど、ドナキチさんがモバマスの方とモロにキャラ被りしててかわいそうなことになってたような……でも逆にウケてた気もするな。


GJ 部 Vol.1 [Blu-ray]
 一話見た時点では「あんまりだな〜」って感じで次から見なくなりそうだったんだけど、どうも後から気になってしまって見直してたら最初の印象はどこへやら、「むしろ面白いじゃん」ってレベルで視聴できたので自分でも驚いた。いや、この作品の面白さは言語化できなくて興味深い。「ストレスレスで頭空っぽにしてスクリーンセーバー眺めるみたいにボーっとしていられる」ってのがポイントであるとは思うんだけど、同系列の『ゆゆ式』とかより断然面白く見れたしなぁ。
 頑張ってその要因を考えてみると、「無理してない」ってとこがポイントなのかも。無理にオチをつけようとせず、とあるシチュエーションで美味しい部分消化したら、そのまま落とさずに終わり、何事も無かったかのように次の話に移る。『イカ娘』みたいに一話三本って決まってないから「ネタの終わりが読めずフッと終わる」んだけどこのシームレス処理によって、より日常感が出ていたように思う。
 あとこの作品、極端にBGMやSEが少なくて、その意図と効果は全部理解してないんだけど、これもシームレス感に一役買ってた。「(ハイ、ここオチですよー)ちゃんちゃん♪」みたいなのがない。


 あとは構造上の話ではないんだけど、キャラが良かったなー。部長可愛いし、紫音先輩も可愛いし、他の娘も可愛くないってのはいない。
 キョロ一人だけ男子で、モテまくってんだけど、それも全員にいじられたりしつつ平和的にモテてる感が強くて、居心地いい空間なんだよな。そこでのんびりだらだら過ごしてるのを見ながらこっちもボケーっとニヤニヤできる作りが徹底されてて、良いアニメだった。そう、最近はアニメのシリアス展開が嫌われるとか言われてるけど、俺まさにそれなんだよなー。もちろんケースバイケースだけど癒されたくて見てるとこあるのは正直なところだし、その優先順位もわりと高い。


 あー、もう一つ本作の特徴に言及しとくと、突然キャラがSD(スーパーデフォルメ)化するんだよね。『妖狐×僕SS』的に。デフォルメキャラは可愛いかもしれないけどあれ意味わかんないよなー。そして俺の趣味に合わないというか、苦手だ。違和感が強すぎるからか、あるいはあまりにもオタクチックだからかな。


 原作未読なんだけど、ただただ消化される運命にまったく逆らう気配もみせず甘んじてそれを受け入れてるかのような潔いエンタメの徹底ぶりには矜持すら感じさせられた。まさしく「THE ラノベ!」、それ以上でも以下でもないぜって感じで好感もてる。
 「最近のラノベは〜」って言説に下手に対抗意識燃やした作品作られるよりはこうやって開き直ってもらった方がみんな幸せになれるんじゃないかって気もするな。


  • ちょっとつまんないかなぁってとこは前述のSD化と、森さん回す天丼ネタ。べつにいいんだけど。
  • キョロが描いた皆の絵を見る話好きだったなー。紫音先輩の「何かな〜? 何かな〜?」っての、妙に気に入った。
  • そういうのやら何やらで紫音先輩が一番好きかも。常識ないお嬢様ネタって鉄板だなぁ。同タイプでは『マリア様がみてる』の祥子を連想する。そう、「先輩が可愛い」ってのが良いのか。



ラブライブ!
 やっぱ「夢を信じて進め」的なテーマだったんだろうな。ラブライブ出場+廃校阻止という目的を剥奪して「なぜアイドルをやるのか?」という動機を問い詰め、親友の留学というおよそ自分ではどうにもならないだろう問題を与える。
 でも、やる気になればなんとかなる。周りの人が手伝ってくれるし周りの人を巻き込める。穂乃果はそうやって巻き込んで巻き込んでやりたいことに邁進していったキャラだし。


だって可能性感じたんだ
そうだ…ススメ!
ススメ→トゥモロウ

 13話の穂乃果と海未が話すシーンでのこの歌の詞にしてもそうだし、他の歌にしても「明日の可能性を信じて進め」的なものが多い。そうして信じて動けば何かしら変わるし変えられるというのがテーマの作品だったんだろう。


 なんか11話あたりの展開で非難轟々の騒動があったようなんだけど、テーマへの布石を出していなかったために視聴者の期待するストーリーと齟齬が生まれてしまったということっぽい。俺はそれほど悪い展開ではないと思ってたんだけど、やっぱ「ラブライブ出場+廃校阻止⇒大団円」という気持ち良い展開を望んでた人が多かったようだ。たしかに肩すかし感はあったし、伏線も張らずに残り三話でシリアス展開ってのが唐突すぎってのはあったけど、あの展開がなかったらそれはそれでクリエイターとしては避けたいであろう「内容のない作品」に近づいてただろうし……。
 ただ「なぜアイドルをやるのか?」に対する答え「やっぱり好きだから」というのには最後が駆け足気味だったこともあって説得力が足りてないと感じたし、予定調和的でもあった。『アイマス』の千早みたいに小さい頃から本当に歌ってばかりいたというのなら重みが出てくると思うんだけど……。だからこの点では昔からアイドルが好きだったにこ先輩の方が重みも説得力もあったと思う。明らかに穂乃果が中心だったサークルで穂乃果の必要性を痛感していたにもかかわらず穂乃果なしで続けようとしてたわけだから。


 そんなわけで、この期のダークホース的な立ち位置だったようだけど正直あまりピンと来なかった。いや、面白かったんだけど、「メチャクチャ面白ぇー!」というレベルではなかったし、今後語り継がれていくレベルの作品とも思えない。
 やっぱり、突き抜けて作画が良いわけでもキャラデザが良いわけでもキャラ立ちが良いわけでも声の演技が良いわけでもストーリーが良いわけでも曲が良いわけでもなかったんだよなー。
 アイマスあたりと比較しちゃうと本当にキャラデザの差別化も図れてないしキャラも弱い。仲間多いから仲間集めフェイズが長くなるし、仲間にした後は活躍の場がなくて目立たなくなったり……(たとえば海未の魅力である二面性――「アイドルなんて」と言いつつ意外とノリノリなところ――は仲間にした後はほぼ見られなくなる)。
 最初に仲間になる全員の顔出しをして、ストーリーを進めながら徐々に一人ずつ仲間にしていくのは1クールという短さの都合上仕方なかったにせよ、キャラの活躍に関しては『イナズマイレブン』あたりを見習ってほしかったな。あれは申し訳程度とはいえちゃんと各キャラに見せ場を用意してあげてるから。本作は効きが良いとは言え、にこ先輩だけが無双してて他のキャラが目立たなくなってたし。




  • 合宿回で、穂乃果と凛が布団にダイブ>転がる>端から転がりながら戻ってきた際、にこ先輩が増えてる、という演出がすげー面白かった。『K』の落書きシーン並に良かったなー。アニメならではの動きで見せるギャグ演出。
  • 物語作品内の弓道って、射つ人の精神状態を視覚的にこの上なくわかりやすく説明できるから便利ですよね。外れたら集中できてない、当たったら迷いがない。これが演劇だったら、監督キャラがカットだして「集中できてないよー!」って言わなきゃいけない。
  • にこ先輩のキャラの出来が良すぎて、他のキャラを食いすぎ。でもかわいい。後半は特に、にこ攻めが凄かったな。便利に使われすぎてたとも言うか。
  • ED「きっと青春が聞こえる」がけっこう良かった。サビでみんなが体を揺らしてノリだすんだけど、会長の上品なノリ方とか好きだったんだよな。