サンデーマガジンチャンピオン雑記

 ところどころしか読んでない。






サンデー

銀の匙 Silver Spoon荒川弘

 新鮮な輝きに満ち溢れ楽しい「春」。鹿の解体やったり育てた豚食ったり、農家の家計事情などを知るなどして楽しいだけではなく影のところも見え始めた「夏」「秋」と来て、農家の明るくない事情が本格的に浮かび上がった「冬」……という構成になってんだなー。なかなかいいテーマへの踏み込み具合だ。縦軸としては農家の問題と八軒自身の問題とがあるようだけど、それはリンクしていて、農家の問題を知り、向き合っていくことで八軒自身の問題も解消されていくんだろう。恋愛要素も調味料的に入ってるけど、そっちは本当にスパイス程度でしかないかな。あと、前も言ったかもしれないけど、御影は最近の作品の中では本当に萌えないヒロインだなーと思う。なんでだろう。


 しかしこうして読んでいると、本当に八軒は異物なんだなって感じる。家業が農家ではなくて、普通に大学行ってサラリーマン……でもなんでもいいんだけど自分で仕事を選んで好きなことやれるっていう、割合普通の人生だと思ってることがここでは普通じゃない。大学辞めて好きなことやってる兄貴が「普通」側の象徴なのかな。
 だから鶏農家の常盤とか、馬鹿な奴なんだけど、それでもいーじゃん、立派じゃんって思える。実際「畜産」のテストでは満点取ってるし……っつーかそんな科目があること自体本当に異世界だよな。同じ農業学校でも、家に縛られているという点を見ると、その重さが『もやしもん』の比ではない感じだ(途中までしか読んでない上うろ覚えで言ってるけど、全員が酒蔵の息子とかじゃなかったはず)。


 こうしたテーマが顕在化してくるにつれてますます地に足が着いた感じがするし、本誌では休載が多いし(責めてない)、本当、大きな盛り上がりは見せないくせに貫禄のある連載だよな。
 個人的には「春」編クライマックスのピザ作りのところがすごい好きだった。ピザ作りに必要なあれやこれやが八軒の人望のもとに自然と集まってくるっていう……。今後ももしかしたらこういった展開で問題が解決していくこともありそうだけどどうなるんだろうなー。「めっちゃ面白い!」とは思わないんだけど楽しみな作品。


 それにしてもこういう学校の野球部が甲子園とか目指すのってそうとう厳しくないか? 家の手伝いやら学校やらで練習時間だってかなり限られてるだろうし。実際大変そうに描かれてたけど。
 あとアニメ化早いな。

常住戦陣!!ムシブギョー福田宏

 (途中からだけど)そこそこ長いこと読んでるのにちっとも面白くなってくれない。クソつまらないというわけではないんだけど、まったく「おぉっ!」ってならない。
 主人公くんは超超前向き型の、決して折れないど根性で素直でまっすぐゴー! なタイプ。この折れなさ、良い意味での鈍感さは『スイートプリキュア』のハミィみたいな感じかな。
 で、本作の面白さの責任はこの主人公くんが担ってると思うんだけど、なんだか妙に面白くないんだよなー。最初から読んでないからなんとも言いにくいんだけど、やっぱ典型的な少年誌のお約束をなぞってるだけって感じがするな。この先生自身の特技は「モブを山のように殺す」くらい。
 絵はありがちなデフォルメだけど洗練されていて、上手いと思う。時間もかからなさそうだ。


 で、そんな本作がアニメ化するとか言いだしたので「えー……」って思った。数え上げればきりがないけど最近のアニメ化に対してこの手の感情抱くことが多くなってきたな。そりゃあアニメ化自体のハードルが下がってるんだろうけど……。






マガジン

『AKB49 〜恋愛禁止条例〜』原作:元麻布ファクトリー 漫画:宮島礼吏 原案協力:高橋ヒサシ

 この作品、面白さの軸をどこに置こうとしているのかよくわからない。秋元康の無茶振り試練が一つのエピソード(○○編)になって、それをこなしてくっていう骨はあるけど、そこまで気持ちよくないというか……、わりとストレスなくみのりの快進撃で乗り越えるさせるのならもうちょい露骨にみのりを上げてやって良い気もするなー。『トリコ』の小松みたいに。
 そういったメインと比較すると、岡部に惚れられた時とか、今回の有栖ちゃんの件とかの方が明らかに面白いんで、大人しくハーレム的な作品にすればいーじゃんと思う。「&Jewel」のMAYAもみのりに惚れさせて欲しかった。ああそうだ、「ハイスペックなみのりが試練を乗り越える話」ではなくて「みのりが人を魅了することで試練を乗り越える話」が見たいのかもしれない。


 あと、こういったラブコメ(ハーレム)系作品にありがちだと思うけど、みのるがヒロイン吉永を好きな感情にまったく感情移入できない。ヒロインはヒロインとしての仕事をしなくちゃいけないがゆえに個性が発揮しにくい=可愛くないとかって理由もあるし設定上不器用で控えめでなければならない吉永の性格が個人的に好きじゃないってのもあるだろうけど、ここに乗り切れないのは結構つらいかな。でも吉永好きな奴っているのか? ただ逆に、メインにまったく萌えないからこそ他のヒロインルートが魅力的に映って面白く感じられるってのはあるかもしれない。


 で、今回の後輩有栖ちゃんに惚れられながら同じ部屋に住んでるシチュエーションってのはちょっと熱い。「秘密の共有」ってのが熱い。秘密を共有することで素の自分を見せられるってのはかなり距離を縮めるものだし……ちょっと期待する。

アゲイン!!久保ミツロウ

 野球部の応援が終わったあたりから話逸れだした感あって、何がしたい作品なのかよくわかんなかったけど、結局は第三者の悩める仔羊をメインにしつつ広い範囲での青春ものをやってくって感じなんだろうかな。そう考えると応援団って何か頑張ってる生徒いたらそいつが何であっても応援(介入)できるわけだから便利だよね。いや、俺はもっと主人公くんの物語とか部長の物語とかその辺の近い範囲のものをやっていくと思っていたのに(野球部の時はまだそれがあった)、なんか色んな女と付き合ってく的な流れになってて「なんじゃこりゃ」ってなったんだよね。だから話逸れてる気がした。いや……いまだにスッキリしない部分もあるんだけど、いちいち主人公が誰かに惚れる必要あんのか? いや、主人公のみならず、色恋の多い作品だよな。色恋沙汰でしか話進められんのかってくらいそればっか。


 あとこの物語は、「主人公くんが人と接して関わって何か感じて成長していく」ってのが大事なんであって、「こっちの世界では前より上手くやろう」だとか、「前の世界よりこっちの世界が大事」だとか、そういう『まどマギ』やら『四畳半神話大系』やらの感じはない(何度もループするわけではないんだよな)。本当の世界も嘘の世界も、どちらにいるべきなんてのもなく、どっちでもいいって感じで描かれてる気がする。たぶん、前の体験があっての今って感じで、成功とか失敗とかって概念が薄いんだと思うんだけどどうなんだろう。
 だから、古典的な「行って帰ってくる系」にも見えたけど、それすらどうなるのか怪しい。行って帰ってきて、元の世界でやり直すってのが筋としては綺麗な気はするけど。


 要は、物語の筋自体がどうのこうのというわけではなく、作者の人間観・価値観を読ませる作品なんだろうな。で、本作の登場人物は結構ダメな奴が多い。長所もあるけど短所もあってその逆もまた然り……みたいな。 その辺、女性作家的、あるいは青年誌的な生々しさがある気がしてとにかく人間を描きたい気持ちはわかる気がするんだけど反面、何が言いたいのかよくわからん感じもあって……という最初の主張に戻る。アゲイン!!






チャンピオン

弱虫ペダル渡辺航

 新シリーズに入ってからの後付感ハンパない。
 だけど、それでも熱いってのはやっぱすごいよなー。できれば単行本でまとめて読みたい。でも読んじゃう。

『囚人リク』瀬口忍

 地味だが至極まっとうな漫画。王道。言うことないけど面白いので今チャンピオンで一番楽しみな作品かもしれない。
 しかし脱獄するまでどれだけかかるんだろう。脱獄してからも長い作品になるだろうしそうしたらついて行けるかわからんなー。とか思ってたけど、鬼道院の過去が描かれるとなると一気に進んでる感出てきて期待してしまうな。それでもかなり長くなるんだろうけどさ。


 う〜ん。漫画って描くの大変なわりには内容が薄いのがネックだよなー。10年20年かかる作品にどれだけ付き合えるんだっていう(作家としては次作で外すリスクもあるし、ヒットした一作を描き続けられる方が良いのかもしれないけど)。内容としては文句なしに面白い本作に問題があるとすればそうした「速度」や「期間」の問題かな。

『ガキ教室』小沢としお

 途中からだったけど面白く読んでたのに終わってしまった。なんでー?
 はじめて読んだけどベテランっぽい。改善する余地があるとすれば……絵か? でも下手だとしても味はあるしなー。でも俗に言う、「家に単行本として保存しておきたくない」系の絵でもあるかもなー。

空が灰色だから阿部共実

 ちょっと最後の方読んでなかったな。連載前、実験的にか、三話分の短期連載があったんだけど、今思えばあれが一番きつかったかも。こっちが慣れたってのもあるだろうし、作者が成長して洗練されたってのもあるかもしれない。陽性の話も陰性の話もあるから最後までどうなるのかわからない怖さがあるよな。一見コメディなんだけど突如として鬱になったりするからびくびくしながら読んでた。ページ捲ると何が起きてるかわからない恐さがあるのは『ネウロ』なんかと同じか。気分で上げたり落としたりして遊んでんじゃないかって気もするくらい先が読めない。


 しっかりオチがついてるのもあるけど、単に日常の一部分を切り取ったような作品もある。たとえば、女々しい男の子が逞しい女の子に「男らしくて羨ましい羨ましい」と悪気なく言い続けて泣かせてしまう話があって、言っちゃいけないことを言ってしまった男の子が茫然とするシーンでふっと後味悪く終わってしまうのだけど、これだけならべつにバッドエンドとも限らなくて、この先男の子がしっかり謝るような展開だって想像できる。要は、物語の種とかつぼみの段階みたいな話があるんだよな。でも十分楽しめて読めてしまうわけで、物語の面白さってイコールあらすじの面白さではないんだよなーってあらためて感じた次第。なんかこう、人と人の感情が触れてぶつかりあってるだけで見てしまうし、逆に言うとそういうのがない作品はつまらない。


 単行本にして5巻分。さすがにネタが尽きて最終回……となったのか単なる打ち切りなのかは判らないけど、色々と実験的なことのできる作品で、作者は楽しかったんじゃないかなー。

名探偵マーニー木々津克久

 途中から。
 絵が上手いとはあまり思えないけど可愛い。ぼさぼさ頭掻いたりするとこ女版金田一耕介みたい。全然本格ではなくて推理とかはしない。調査。
 ホワイダニット系で、人間の裏の姿が垣間見えたりする系。佳作系で一話完結系で雑誌の中堅を担う系。
 と最初は思ったけど嘘だ。そういう話もあるけど(映画監督のやつとか)、これは日常系に近いかな。日常系ミステリじゃなくただの日常系。
 より正確を期すなら「境界線」と言った方が良いかもしれない。マーニーはあくまで日常側に身を置いているけど、非日常に触れやすい探偵をやっている。その仕事を通してちょっとした非日常を垣間見たり、ちょっと変わった体験をしたり、発見をしたりする。日常でもないんだけど、すごい非日常ってわけでもない。


 主人公はややボーイッシュ? 色気がないところが逆に魅力になっているキャラってのは意図して作ろうとすると難しそうでもある。とにかく、この主人公の容貌やら性格やらが二重丸といってよい出来で、この主人公の魅力で成立している作品といって過言ではない。シンプルに主人公名をタイトルにしたのも正しい判断だったと思う。作品としてのメインはあくまで描かれてる内容なのかもしれないけど、この主人公による萌え要素はかなりでかいと思っていて、俺に限ればこの主人公が男だったらたぶん読んでない。つってべつに萌え萌えしい内容でもないんだけども。


 毎回の話は結構小粒、人間の裏の姿を描くとしても『空が灰色だから』みたいに強烈じゃない。それに加えて絵が荒いのですごい安心する。週刊連載漫画の平均ってこのくらいでいいと思う。作と画を分担してる人たちの絵のレベルは高すぎる。チャンピオンは全体的に読んでて安心する作品多いよなー(侮辱じゃない)。

バイオハザード 〜マルハワデザイア〜』 原作:カプコン 漫画:芹沢直樹

 ぜんぜん読んでないけど、絵上手すぎるよね。デジタルなのかしらんけどトーンが凄すぎるのが(細かすぎる?)読みにくい感あって気になるくらい。逆に汚い感じもするんだけどなんなんだろうこれ。原稿やコミックスだとふつうに綺麗なんだろうけど。

短期連載(4週)『くろすぶりーど』たばよう

 19歳だって、すげー。『空が灰色だから』と言い、チャンピオンにはこういう才能が集まるのか。
 人間と動物が融合された世界というSF設定がちょい奇抜にも思えるけど、描いているのはまったくもって普通のもので、「他人を思いやる気持ち」とかそういうの。『空灰』よりマイルド。
 にわとり・蝉・熊・ウサギとあったけど蝉がちょっと落ちるくらいで全部面白かったなー。上手くいえないんだけど、物語作品の本質であろう「感情」を捉えられてると思う。


 pixiv見たんだけど、この人は擬人化とかそういうのが好きみたいだ。それぞれ種の性質や本能があるとして、本能だから何も感じてないのか、好きだからやってるのか、本能だけど好きじゃないのか……とか、「これがこんなこと考えてたら面白いなー」とか妄想するのが好きなのかもしれない。であれば今回の作品は生まれるべくして生まれた作品と言えそう。自分の本質をそのまま出しただけで、耳目を集めるための奇手奇策の類ではないんだろう。好感がもてる。

木曜日のフルット石黒正数

 本作はほんのりと社会派の味付けがされる傾向があるけど、けっこう昔に載ってた話で(たぶん単行本では二巻に載ってる)、経済系のゲームにハマった鯨井先輩が、「真面目に働く気になりました?」とか訊かれて、「いや、ゲームなんかに影響されるわけないじゃん」とかいう話があったじゃないですか?(これから批判しようというのにうろ覚えだ!) この話って「ゲームは悪影響があるから良くない!」という風潮に対するアンサーなわけだよね。「ゲームに影響されてバカなことやる奴なんているわけねーじゃん」っていう。
 『それ町』とか見るに石黒先生はゲームなんてクソだと言いたい訳じゃなく、むしろ擁護したい派なのだろうとは思うんだけど、この庇い方は良くないと思うんだよね。だってこれだとゲームの良い影響もないって言ってるも同然だし。肯定したいと思ってる側からすると「ゲームなんて大したもんじゃないよ、つまらないもんだよ」っていう卑下するような擁護はちょっとどうかと思う(自分の作品に対してそういう擁護をするのは構わないと思うけど)。ゲームは影響力のないものなんかではないだろう。いいんじゃないですかね。悪い影響があるって認めても。悪い影響もあるし、良い影響もある。ゲームに限らず何だってそんなものだと思うし。庇うなら他のやり方でやってもらいたい。


 ともあれ、こういう作品はやっぱ雑誌に一つは欲しいとこだよな。最後に読んだ作品が『空が灰色だから』の鬱話とかだったらすげー嫌だし。お寿司でいうガリみたいなものか。