2011年10〜12月期アニメ感想 2



境界線上のホライゾン

境界線上のホライゾン 〔Horizon on the Middle of Nowhere〕 1 (初回限定版) [Blu-ray]
 学生が大きな権限を持っていて、少数精鋭(に見える)で国盗りやって……ときたら当然連想する作品はアリスソフトの『大番長』。インキュバスとかスライムとか、端役のキャラほど一発芸的なキャラ立てしてくるところもアリスソフト的(アリスソフトはミイラとか古代兵器とかハニワとか)。絶対影響受けてるよなーと思ってるのだけど、どうなんだろ。


 あとあれだね。「気持ちいいけどご都合主義で安っぽい勧善懲悪物語」から抜け出してある程度大人の視聴にも耐えられるものを作ろうとするとき、
  「敵を嫌なだけの奴にはしない」「味方にも嫌な奴をおく」とか、
  「死ぬべきところで人を殺す」「救われないキャラを出す」とか、
  「一見盛り上がりに欠けそうな細部を緻密に描く」とか、方向は色々あると思うんだけど、本作は「政治」だね。本多正純の問答回や牛歩戦術に代表される「本音だけでは戦えない世界」「建前や大義名分」を描くことで安っぽい物語から脱しようとしてる。
 逆に言うとそこ以外はノータッチというか、誰も死なずにハッピーエンドをやりそうな雰囲気があって、そういった快感は味わわせてくれそうなんだよね。良いライン突いてるなーって感じ。


 うーん、こんだけ? 終わっちゃった。これ以上を語ろうとすると、細かい部分でここが良かったここはイマイチって書き方しかできなさそうだ。二期期待待機。





UN-GO

UN-GO 第1巻 初回限定生産版Blu-ray
 来たよ! まただよ! また推理とは名ばかりの断片的事実を自分のストーリーに合致するよう繋ぎあわせる系ミステリだよ!
 ……と、今さらそんなことで怒りはしないんだけど「こいつが犯人に違いない」というところから推理を組み立てる新十郎くんはさすがにどうかと思ったね。


 でだ。メインに言及すると、本作は推理小説にありがちな「謎の解決」と「事件の解決」を対立させた構造なわけだ。推理小説をいくらか読んだことのある人なら、「本当のことは言わぬが花さ」的な嘘推理円満解決を見たことがあるだろう。誰もが損をしない、傷つかないような解決を探偵が選び、真実は一部の人間+読者のみが知るに留まるというタイプのアレ。海勝はこのタイプだ。
 でもこれってもっと単純化すれば、「正直か嘘か」という話になる。こちらは推理小説を読まない人でも道徳の時間に習っただろうし、様々な創作物で触れてきただろう。「嘘はいいのか悪いのか」という問題だ。大方の場合、「ついていい嘘もある」的な結にまとめ上げられているし、「正直であればいいわけではない」「本当のことだったら何を言ってもいいわけじゃない」などの主張や「馬鹿正直」という言葉もある。その逆もある。
 本作はこの正直と嘘、二つの美徳を信じる者同士の対立である。しかし当然、どちらが正しいと言えるものではない。
 だけど本作ではバイアスがあるというか、海勝の方が醜く描かれているよなぁ。いや、無実の人間を殺して丸く収めようとしているわけだから実際醜い。良いこともしてるけど正義の精度や視聴者好感度が低い。平等な対立になってないよね。だからこそ勧善懲悪よりになっていて面白いんだろうけど、だからって海勝を打ち負かす(決着がつく)エンドはテーマ的に描けるわけもない。じゃあどんな最後だったかと言えば、「二人の戦いは今後も続いていくのでしょう」なエンドだった。ちょっとはぐらかされた感はあるな。


 キャラは全員良かったけど、少年因果・美女因果・風守あたりが好き(萌え視点か)。新十郎くんと海勝さん達二人は、「なぜ真実にこだわるのか」「なぜ真実を軽視するのか」というとこまで描写して欲しかったな。エピソードゼロを見ればちょっとは何かわかるんだろうか。それとも原作か?





僕は友達が少ない

僕は友達が少ない 第2巻 [Blu-ray]
 本作、『WORKING'!!』、そして『ベン・トー』は今期三大ハーレム(?)系ギャグアニメとして自分の中で近しい位置づけにある(うまく括れない)。そしてそのどれもがレベル高かったという印象だ。


 最後でネタばらしするまでは良かったと思うが、そのあまりにも中途半端な終わり方が印象悪かったのか、どうも評判が良くなかったらしい。たしかにあの終わり方はちょっと投げやりすぎる気がしたけど、放送前から小説も売れてて期待されてたそれなりにでかいタイトルだったのではないのか。それに内容もかなり面白かったと思うけども。


 売れるべくして売れたオタク系キャラ萌えギャグアニメという印象かな。『俺妹』とけっこう似てると思う。
 縦軸を作ってハーレム状況を設定した後は、「友達がいない」という弱味(萌え要素)を持ったバラエティ豊かな女の子達がいて、巨乳とか腐女子とかっていじりやすそうな属性付けて……。で、展開されるギャグも腐女子ネタ百合ネタ下ネタゲームネタ分が多いオタク寄りなもの。こんなに良いキャラを作るのは簡単じゃないにしても、かなり売れることを計算されて作られた作品だよなぁ。


 あと、こういった作品やギャグは嫌いじゃないのだけど、結構大胆に踏み込んだレベルの下ネタが多くて驚かされた。「卑語(エロゲー)朗読で放送禁止用語言いかける」とか「真っ白い液体をかけられた」とか……。もちろん実際に何かしてるわけじゃないし過激な作品ならこれ以上のものはたくさんあるのだから単に作品の系統から予想したレベルを上回ってたってことなんだろうけど……やっぱかなり男向け意識して作ってたんかな。同時に、ここまで露骨なことをやらないと受けないのかという畏怖も感じた。





gdgd妖精s

gdgd妖精s 第1巻 【BD】 [Blu-ray]
 案外まともに会話ギャグをやっているAパート、3DCGを使いネタ色の強いBパート、3DCGに加え声優がアドリブで喋っているらしい内輪ウケ+ネタ色の強いCパートで構成されている。で、A、B、Cの順に好きだった。


 本作の中でピクちゃんのツッコミは話題にあがるレベルのポイントだったようだ。きちんと一つ一つ相手の発言のおかしなところを取り上げていく丁寧なツッコミは銀魂を彷彿とさせる。ツッコミを短い・長いで分けるならば間違いなく長い方だ。しかし銀魂とは違い勢いがないため、どちらかというと「ツッコミ」というより「訂正」といった方が近いのではないだろうか。
 そして本作は、「落ちてない」と言われる『イカ娘』や『森田さん』が同時期に放送されていたためにか余計「落ちてるか否か」が注目されていたように思うのだが、贔屓目に見なくても落ちてた。しかもそれなりに綺麗に。その辺については前書いた


 でもなー。本編と言われてたCパートはあんま好きじゃなかったんだよなー。芸人でもない声優さんが芸人みたいな大喜利させられて、スベるんじゃないかとハラハラしてしまうし(実際スベッてたこともあったし)、声優ネタ・メタネタもあまり好きではない。あと一番嫌だったのは持田房子。たしかにインパクトある造形だったし最初に明坂聡美さんがそれで笑い取ったのはいいんだけど、その後三回も出てくるとかもう完全に視聴者含めた内輪ネタと化してたよね。スタッフは持田房子出すだけで笑い取れると思ってたよね。たしかに「w」はあったかもしれない。でもあれ見える距離にいる相手*1を優しく気遣った結果の持ち上げとかお愛想入ってただろ。そんなに面白くねーよ!


 つまるところ、製作側がアニメ的な脚本を介在させず直に笑い取りに来てたのが嫌だったんだよな。アニメや漫画の笑いと現実世界の笑い(芸人のやるコント漫才)って別なわけだけど、アニメ的な脚本から一歩出たその場所でのセンスがあるとは思えなかった。そもそも吹き替えで大喜利やらせるならホットペッパー的に吹き替えなしでも読める映像・その段階では面白くない映像にすべきなのに変な造形の人物にありえないシチュエーションでわけのわからないことやらせてその時点で思い切りウケ狙いだったし、それがその……ちょっと寒かったし……。きつい。


*1:スタッフが他のUP主ら同様コメントを読んでいることは想像に難くない