毎日少しずつずらされるバス停に僕達は気付けない


なんか某アニメみたいなタイトルになった。


面白いと思って見たり読んだり聴いたりやったりしている対象がある時、対象のクオリティが落ちている場合にもそれに気付かず、面白いと信じたまま続けていることがある。
気付くのが遅れれば遅れるほど損をしたと後悔する度合いも大きくなるのであまり妄信してのめり込まず、柔軟に判断していきたいものだけど、難しくてなかなか気づけないこともあるんだよな。
『慣れ』は怖い。


経験上こういった罠は『無料・低価格系』に属していることが多い気がするが、単に自分がそっち系の罠に引っかかりやすいだけかもしれない。『流行系』なんかもあるだろう。
ちょっと例を挙げてみる。

  1. 「この漫画すげー面白ぇ!」と思い連載追っかけて、気付いたら昔ほど興奮できてない。
  2. 個人がサイト上で公開している音源や『歌ってみた』あるいはインディーズバンドのライブなど、「素人の作品にも良いものいっぱいあるじゃん!」とか思ってそればっか聴いた後、プロの作品を聴いてクオリティの高さに驚く。
  3. フリーゲームでも面白いのいっぱいあるじゃん!」とか思ってそればっかry

1。
「コレはココ!」って最初に価値を決めて固定しちゃうと後で変動・推移した時に気付けないことがある。漫画雑誌などで連載を定期観測しているとこの罠にかかりやすい。楽しく読んではいるけど、『トリコ』はかなり面白くなくなってると思う。
2。
プロとアマの間には歴然とした差があるんだけど、プロの作品Aに匹敵するレベルのアマの作品Bを見ると、「アマ全然イケんじゃん」とか思って他の作品にも手を伸ばしだす。そうして手に取ったアマの作品Cもアマの作品Bと比べるとちょっと劣るかな? くらいだから「良い良い」と楽しむのだけど、アマの作品Bとプロの作品Aを比べると……みたいな。
これまで見下していた物の中にも素晴らしい物があるという宝石発見の感動で「いざ新大陸!」と意気込んで開拓するもやっぱそっちは石の多い土地だったケース。
3。
無料のゲームやWeb漫画、100均etcetc……。「十分面白いしタダなんだから……」なんて考えがちだが、有料商品と比較して勝てるものはそう多くない。価格差を考えても普通にお金出してワンランク上の物を買ったりワンランク上のサービスを受けたりした方が良いケースはままある。それに、値段がタダでも時間は等しく消費する。


他にも例は挙げられるだろうが、大抵は『初期の好印象を引きずってしまい、そのままクオリティの低いものに触れ続けてしまう』というパターンだろう。
そして、ただ罠にかかるだけならまだいいが、往々にして人はその後も「ここは素晴らしい土地……!」と思いたがってしまうもので、そこからなかなか抜け出せない。こういった点でも性質が悪いトラップなのである。


勿論、2や3のケースのようにジャンルやステージの違うものにはそこならではの面白さがあるし、質が悪いとは言え夢中になることが悪いことではない。長いことその対象と付き合った結果、愛着が生まれることだってあるだろうし、良い思い出になることだってあるだろう。「今思えば何であんなものに……」なんてことは大なり小なり誰にでもあるのだからそれを笑ったり否定するつもりはない。


だが、何かにハマったり夢中になれたりすることが素晴らしい反面、そこに危険があるのも確かなのだ。
俺は、そうした危険性をよく理解し十分に気を付けた上で、できる限り周りに流されず、自分を見失わず、本当に自分が面白いと思えるものだけを楽しんでいきたいと思う。
たとえ今まで好きだったものでも面白くなくなったと感じたら冷徹にそれを切り捨てられるようになりたいと思う。
本当は面白くなくなっているものを「面白いから」と思い込んでいつの間にか楽しめなくなっているなんてことにはなりたくない。
「習慣だから」とか「最後まで読めば面白い筈だから」なんて自分を騙したり奮い立たせたりしてまで無理をしたくない。


だから俺が図書館で借りた本を読み終えないまま返却期限を迎えたのも、未だに消化できてない春アニメが山ほど溜まっているのも、金未来杯の新人読切を最後まで読まないまま次の月曜日を迎えてしまうのも、HDD内の整理を途中で止めてこんな記事を書いているのも、決して初志貫徹できない意志薄弱な人間だからではない。根性なしで努力できない人間だからではない。
これは、無理をしないと決めただけ。達成できなかったのではなく、こっちから切り捨てただけ。そう、そうだ! 切り捨てたんだ! 最初は面白かったけど途中から面白くなくなってることに気付いたからこっちから切り捨ててやった! 俺は駄目人間じゃない! 寧ろ勇敢だったんだ! この現状は俺が勇気を出した結果! 切り捨てる勇気! 切り捨てる勇気なんだ! バンザイ!