『夏のあらし!』 〜戦争をリアルに描いた作品リストに追加だ〜

夏のあらし! 5 (ガンガンWINGコミックス)
大抵の戦争ものは、当時の様子を描くことで、「ああ、悲惨だったんだな」「大変だったんだな」「戦争はしちゃいけないんだな」などの感情を誘起するが、総じて過去のもの――自分とは関係のないものとして処理されがちである。所詮他人事であり、同じことが自分の身に起こり得るとは考えられていない。
これは受け手が悪いのではなく、作品がそうした作りになっているということ。普通に"戦争"を描けば仕方ないことなのでそれが悪い訳ではないけれど、遠い過去のものとなっていく戦争の生々しい感覚は時と共に伝え難くなっていってしまう。


が、本作は過去と現代がリンクしてるために無関係な過去ではなくなっている。時間移動が可能になった瞬間から『自分の身にも起こりうること』として身近になっているのだ。
そして実際、現代人の一や潤がそこで翻弄されることになるのだが、そこでは彼らが現代人から見た戦争を代弁してくれるため大変感情移入がしやすい。より"ヤバさ"が伝わりやすい(「ダメだ こんな 絶対に 現実じゃない」「こんな理不尽なしに方イヤ!! お願いだから家に帰してぇ!!!」。カヤと共に飛んだ潤が空襲に遭った時の描写は秀逸)。
そうした訳で本作は"戦争"を生々しく見せることに成功しているので偉い(同質の作品には『戦国自衛隊』とか『さよなら妖精』がある)。
……という内容の感想を書こうとしたのがアニメ一期の時。ようやく書けた。書けたぜ(そう言えば『スクールランブル』の感想も書こうとしていて書いてないな)。




魔法の料理かおすキッチン 1 (ジャンプコミックス)
・昔の、記号的漫画演出が多い
明らかに意図的に使われてるんだけど、記号的にすることで解りやすく、かつコミカルにという目論見だろうか。
その古臭さは逆に面白くもあって、『魔法の料理 かおすキッチン』を読んでるよう。その再現性に感心もするのだが、反面少しうざったくもある。
演出が目立ちすぎてて鼻につくという、シャフト新房演出の良くない時verみたいな。多分『バクマン。』のブサイク顔を嫌がってる人と同じ感覚。普通に描いてくれ。


・5巻の、やよゐが過去に飛んで山代と会うエピソードが好きで、話も良くできていると思った。
 ・「あなたは将来立派な男性になるのですから」なんて言われたら男はひとたまりもない。落ち込んでいる男性がいたら「あなたはやればできる!」って言った方が良いって昔『特命リサーチ200X』で言ってた*1。ま、やよゐ自身は知ってる事実を言っているだけなのだが、そうじゃなく、100%信用のみで言われたらそいつは幸せだ。
 ・そんなこんなでとにかく好きな話な訳だよワトスン君。両者共にキャラの違った一面が見え、そのことで深みが出ているのが良い。やよゐの好感度も上がったね。ぐっと魅力的に映るようになった。だってのに、どうしてアニメでやらなかった? いや、アニメでやってなかったから面白く読めたとも言えるけど。
 ・自分がついさっき経験したことも相手にとってはずっと昔の出来事。場合によっちゃ忘れられてることもあるというのは切ない。体験鮮度の差がすれ違い感を生んでいるの?
 ・しかしこのエピソードを経験したのなら山代はあらしではなくやよゐに惚れているべきだろう。ここはいただけない。てめーなに忘れてやがる。

*1:ちなみに、良くないのは、「私もよく失敗しちゃうんだぁ」と"同感・共感"してしまうケース。女性社会は"同意"や"共感"が潤滑油とされるのでこう言ってしまいがちらしいが、「お前に何が解んだよ」「お前と一緒にすんなよ」と返されてた。「俺は自分の潜在能力的なものを肯定して欲しいのにお前なにダメな俺を肯定しちゃってんだよ。否定しろ否定」てことだ