アイドルマスターシンデレラガールズ 〜メタ演出を取り入れた一コマのキャラ表現演出
「ツンデレ」なんかも最初は「ツンデレって何?」って扱いだったのに、記号化が進むにつれ二コマ的な即デレがややネタ気味にフィーチャーされながら世間一般に浸透していき、最終的には「ア、アンタのことなんて全然好きじゃないんだからねっ!」の一言に集約・表現されてしまい(これなんかは二コマどころか一コマだ)、したがってツンデレの流行頃から、「省略によるチョロイン感の強調表現」というものが流行っていったと言えるかもしれません*1。
というわけで。『デレマス*2』の神崎蘭子ちゃんの話。余談だがいまさら本作に関して話ができるのもアニメ化のおかげだ。
さて、『デレマス』は「キャラを魅力的に見せる」という意味において非常に優れた作品だと思っている。短いセリフで魅力的に見せるのが上手いんだよな。「どういうキャラなのか」を一発で分からせ、その後ツンデレ的落差を見せ「掴む」ってのが本当上手。
落差を見せるのは多くの場合は特訓後で、例を挙げると、
などなど多数在籍。キャラが見違えて見える特訓後(デビュー後)の姿を楽しみにしているPは決して少なくないことと思われます(特訓前の方が可愛いなんてこともザラだけど)。
だが、これは言わば「二コマ目」にあたる見せ方。中には登場時の一セリフ……一コマだけで落差が表現されてるアイドルもいます。
その一人が彼女、小関麗奈というキャラで……、
「さぁ行くわよ、○○! レイナサマがナンバー1アイドルになる手伝いをできるなんて、アンタ運が良いわ。後世まで語り継ぎなさい。愚民共がアタシの前にひれ伏す日が楽しみね! アーッハッハッ…ゲホゲホ」
こんな感じ。「偉そうで生意気なガキだ……と思ったらなんか憎めない子だった」というところを最後の「ゲホゲホ」だけでシンプルに表現する手腕はやるなぁと思うんだけど、そんな中でも神崎蘭子ちゃんは別格。
なんと彼女は、セリフの後ろに括弧でくくられた翻訳を掲載するというメタな手法によってその二面性や落差を一コマで表現されていたキャラなのである。
その代表例が当時界隈で流行した「闇に飲まれよ!(訳:お疲れ様です!)」だ。
当時はたしか中二病キャラが流行りだした頃で、中二病キャラは何人もいたと思うが、この、意味の分かりにくい中二耽美セリフが常時翻訳されるという神演出により、「痛いのが笑える」という他の中二病キャラたちとは一線を引き、「この娘良い子だよ!」というキャラになっていたと思う*3。
そういうわけで試み的には大成功だったカッコ内翻訳だが、よくよく考えると、どういうことなの? 誰が翻訳してるの? ですます調になってるのは意訳? 心の中ではそう喋ってるってこと? と疑問符が連なってしまう(勝手に「!」マークが付属されてたりするので、意訳っぽい感じはする。わざと可愛らしくなるように訳してるだろって)。
なのでアニメに蘭子が出てくることが分かった時点でこの辺りどう表現するのかが気になっていたのだが、結果は見てのとおり、特別これといった演出もなく、無難に普通の中二病キャラとして扱われていた。
もちろん、翻訳がなくとも彼女が良い奴で、意外と少し恥ずかしがり屋で……と、その性格は分かるようになっているのだが、やはり「かっこつけて去ろうとする」>「傘を忘れる」のように2コンボでの表現になってしまい、たったの一コマ、一つのセリフで魅力を表現し、ファンを獲得したゲームの演出に比べると見劣りしてしまう。
アニメなのだからそんな一瞬で魅せる必要もないのだけど、多少不自然でも字幕演出なんかであの魅力を再現して欲しかったなぁと残念に思うわけである。
その点で言うと、『神様はじめました』における鞍馬の、「登場する際にV系BGMが(やや音量大きめで)かかる」という演出は上手面白かったね。あ、でも特定キャラが喋る時だけ特定BGMに変わる演出は記憶にあるのだと『フルーツバスケット』の草摩綾女が最古だ。よく覚えてたぞ、俺。
そういう強すぎる演出やメタ的な表現が嫌だというのであれば、作中翻訳してみせた新田美波ちゃんに同時通訳してもらう、なんてシーンくらいは見たいものである。考えてみれば翻訳のですます調は美波ちゃんが訳したようにも見えるし、このアニメが元でキャラに新たな属性や設定・ネタが付加されるのも良いと思うので。
……まぁ、ブルーレイ化時に副音声で翻訳ついてたら神だけどな。