『AKB49〜恋愛禁止条例〜』感想

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AKB49~恋愛禁止条例~(10)特装版 (プレミアムKC)
 概要の方はペディアを見てもらうとして、基本的にはマガジンにありがちな(?)作話と作画を分けたウェルメイドな作品。安心して読める。反面無難な出来の佳作とも思うが、感想を二三点。

現実のAKBとのリンク

 本作を語る上で外せないポイントの一つだろう。
 この手のアイドルは必ずと言っていいほどスキャンダルやメンバーチェンジ・卒業と言ったニュースが付きものなので、明日にもどうなるのかわからないその問題をどう処理するのか、という点には興味があった。作品上どうしようもない問題もあるかもしれないが、本作が現実のAKBをモチーフとして作劇し、「『AKB49』の世界は現実ですよ」という体をとっている以上、できるだけ無視せずに、かつ『49』世界のドラマに寄り添わせる形で描いてほしいものだ。


 そこで前田敦子卒業をどう描くのかなと思っていたら、なんか「みのり(主人公)達がいるのなら私が卒業しても大丈夫」「みのりがいることで卒業を決めた」みたいなニュアンスで処られてた。面白い。
 反面、作中の48が立派すぎて、最近の合コンスキャンダルなどによる現実との乖離がどうしようもなくなってる感もある。
 なので本作を楽しみたいというのであれば実際の48のことはあまり知らない方がいい……と思う。

仲間集め

 『BECK』や『イナズマイレブン』など、バンドや団体競技ものの男性向け作品には仲間集めというフェイズ・縦軸が設けられていることが多く、これは「最強の○○を作ろう!」のフレーズに弱い男達を熱くさせる重要な要素の一つである。男は「最強」を夢見るものだ。そして本作にもその縦軸を匂わせるシーンがある。

「あのマネージャーもなかなかの劇薬じゃないか pH(ペーハー)の低い者同士を集めても大きな化学反応は期待できない
 運命に導かれ 人の下に人が集まる 面白い・・・・ さながら黒澤映画のようだ
 このプロジェクトは正規ユニットとの文字通りの真剣勝負 あとは腕利きのサムライたちをいかに仲間にしていけるか」
〜8巻59話『作曲家』〜


 そしてこの後みのり達は、「わずか1週間で50万回再生を突破した絶対音感を持つ中学生」荒川晴人に「GEKOKU嬢」の曲を担当してもらうことになるわけだが、あのエピソードでみのり達は心強い「作曲家」を仲間にできたとみていいだろうし、今後も同じように優秀なスタッフや仲間を得ていく展開が予想される。これはワクワクせざるをえない。


 ちなみに次の仲間としては「&Jewel編」で登場した駆け出し放送作家「都築遥佳」あたりを期待してたんだけど、本誌の方では「神崩し編」とか言い出して仲間が増える気配が微塵もなくなってるので焦る。つーかCD売上が目標達成しちゃったからGEKOKU嬢としての活動はもう終わっちゃった?(うろ覚え)

その他

 サイドバーでもちょっと書いた。
 岡部愛が「本物の恋愛をしろ」と言われた時にその相手役に選んだのが女装してない主人公だった*1、という展開があり、あそこで繰り広げられたラブコメが本作で一番ニヤつけたエピソードだった(というか基本、ニヤニヤするような作品ではない)。
 これまでにも女と思われている状況から発生するラッキースケベはあったし、一人の人間として好かれるということもあったのだが、男として本命以外から好かれるというハーレム要素はなかったのでやられたなーって感じ。本命である寛子に二人でいるのを目撃されたり、「みのり」状態でその時の誤解を解こうと試みたりして、二重生活キャラとしての面白味を最大限に活かしてたエピソードだった。コナン君か。


 ……のだが、すぐに終わってしまったので惜しい。

*1:繰り返すが、本作は漫画空間なので女装を解くだけで別人扱い。決して同一人物と疑われることはないのだ!