エンドレスエイト、エンド


ようやっと終了。
盛り上がりっぷりはこんな感じだった模様。


自分が見てた時の心情もまさにこんな感じで、存外にカタルシスがあったのだけど、
果たしてそれが物語から受けたカタルシスかと考えると甚だ怪しい。
いや、ボリューム大き目のBGM効果も相俟って呼び止めシーン自体が盛り上がるものだったことは間違いないと思うけど、
僕が受けたカタルシスの7割方は「エンドレスエイトが終わった」ということに対してだったのではなかろうか。
苦行の達成感と苦行からの解放感に清々しい感動を覚えたんであって、その内容に対してカタルシスを覚えた訳じゃないような……。
いやま、それを狙ってたのかもだけど、そのカタルシスは同じことさえやれれば、どんな糞アニメでも味わわせることが可能なカタルシスだったんじゃないのか?

■今回の演出について

で、見終わった段で再考してみると、やっぱこれはちょっと良くなかったかなーと思う。
ハルヒが貶されてたり批判されてたりするのを見ると悲しくなってしまう僕が言うのも矛盾してるけど、まぁ……うん……。


演出として認めないって訳じゃあないけど、
同じ二週間を何度もループする話だからって本当に何度も放送するってんじゃあそのまんまじゃねぇかよと思っちゃうわけですよ。あまりに芸がなさすぎじゃあないか。
そりゃあ"何度も放送"という手法ほど長門の感情を知らしめるに適したものはないだろうけど、それにしたって、それをそのまま体感させるってのは些かスマートさに欠けるというか、物語であることを放棄してるって気がしなくもない。
登場人物の体験した出来事が、僕らの想像も及ばないような稀有で特異なものだとしても、なんとか工夫して感情移入させるのが物語の正しい語り方なんじゃないのかと思っている僕にとって、単に体験によって理解させようとするシミュレータめいた今回の演出はちょっと受け入れ難い。
今回の演出って、登場人物が鞭で打たれるシーンがあって、その痛みを表現しなければならないって時に、その痛みを知らしめる為に、実際に僕らを鞭打ちしてるようなものだと思うんだよなぁ。リアルだけど、まんまじゃんっていう。
映画「チャーリーとチョコレート工場」で、上映中、映画館でチョコレートの匂いを出す、っていう演出があったけど、それに近いと思う。「エンドレスエイト」は、媒体を逸脱した演出をしてるわけではないので決してナシではないのだけど*1、その表現手法はなんかズルイよなという気持ちが払拭し難い。


じゃあどうすれば良かったかって言うと、
ありきたりながら、7話目(?)ラストの、喫茶店でのワンシーン繰り返し演出のようなものなら良かったんじゃなかろうか。
同じ二週間を何度もループする話だからと言って二週間丸々を何度もループさせる必要はなくて、その中のワンシーンをループさせられるだけで僕らは十分、「あぁ、また同じことを繰り返してるんだな」とループを理解できるのだから、それでいいじゃん。
あと、ハルヒを引き止めるシーンでキョンハルヒの体がブレる。何度も繰り返した過去の残像が映るというのも良かったし、表現の手段がない訳じゃない。


だけどまぁ、そんなのは重々承知した上でやったのだろうし、やってしまった気持ちも解らなくはない。
今回のエンドレスエイトをやろうという時に「何度も同じ話を放送しよう」という発想は誰でもすぐに思いつくものだろうし、やれば確実に耳目を集めるであろうその手法は随分魅力的な、思わず飛び付きたくなるような邪道だったであろうことは想像に難くない。そしてハルヒにはそれを実行できるだけの人気があったのだし、それに、何と言っても、
「いつ終わりが来るか、何回繰り返されるのか判らない」という感覚を味わわせるにはうってつけの演出だった。アニメでしかできないことでもある。
でもやっぱこれだけの不満が噴出したってのは、8回ものリピートに耐え切るだけのバックアタックではなかったってことなんだろう。
やはりというか結局、一番の問題は回数だったってことか。
月並みな意見になってしまうけど、3、4回なら良かったのかもなぁ。


にしても、何で9回でも7回でもなく8回だったんだろう。それがベストだと思ったのならそれで良いけど、だとしたら何故8回がベストだと思ったのか聞きたい。
それとも単に、残り話数の都合か?
「視聴者がギリギリ我慢できる苦痛の程度を考えると、ベストは6回だろう」
「でもそれだと残り話数が2話余りますし、2話でやれる話はありません」
「じゃあ仕方ない。8回でやるか」
みたいなことか? となるとベストな形じゃなかったことになるけどそれで良かったのか? うぅん……。
まぁとにかく、辛かったよね。なかなか。


しかし、こういった形で登場人物と同じ感覚を擬似的に体感させることができるなら、苦痛や閉塞感じゃなく、もっと陽性のものを体感させて欲しいなーと思った。可能か?


そしてあまり関係ないけど、京アニ泣き顔集。すばらしい。

■補足・追記

今更ながら今回の手法って、
繰り返せば繰り返すほど下がっていく好感度と、
溜めれば溜めるほど増していく脱出カタルシスによる好感度の上がり具合とを差し引きした時にプラスになる回数が望ましかった訳で、その見極めが肝になる手法だったんだよな。
で、「演出としては認めるとして、その回数で良かったのか。8話という回数は果たして正しかったのか」と言いたかったんだ僕は。


そして京アニにとって期待していた結果が得られたのか、見込み違いだったのかがとても気になると。

*1:と言ってチョコレート工場がアウトって訳でもない。あれは枝葉部分のお遊びっぽいので見逃せる